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ホワイトペーパーの作り方|8割が「期待外れ」を経験する理由と、評価を下げない書き方 

パソコンを見ながら考え込むビジネスパーソン。ホワイトペーパーの制作で、期待外れにならない方法を考えているイメージ。
宮崎祥一の顔写真

執筆者:宮崎 祥一

SAS Institute、Teradata、Avanade、McAfee、Experian、Honeywellなどの外資系IT・アナリティクス企業で、30年以上にわたり法人営業とビジネス開発に従事。製薬、化学、食品・飲料、半導体などのプロセス産業のほか、金融、小売を中心に、導入事例の乏しい新領域における案件創出から受注までを主導。2023年にHoneywellのAccount Directorを退任し、現在は株式会社アルファブランディングを通じて、新製品・新領域ソリューションの提案の設計を支援

はじめに|ダウンロード数の裏で、何が起きているか


SNSの広告を見て、「これは役に立ちそうだ」とホワイトペーパーをダウンロードする。ところが開いてみると、広告で期待したほどの中身ではなかった。ウェビナーでも、同じ経験をしたことがある方は多いと思います。

送った側から見れば、関心を持った人の連絡先を一件獲得したことになります。しかし受け取った側には、期待が大きかった分だけ落胆が残ります。その会社への評価は、ゼロからではなく、マイナスから始まることになります。

ホワイトペーパーを次々に作り、ダウンロード数を積み上げようとするほど、一本ごとの質は追いつきにくくなります。ダウンロード数が増える裏で、評価を下げた読み手も増えているかもしれません。

この記事では、まずホワイトペーパーの一般的な作り方を確認します。そのうえで、ダウンロードした人がどれだけ期待外れを経験しているのか、それが会社の評価にどう響くのかを調査から見ていきます。最後に、期待を裏切らないための書き方を整理します。

1. ホワイトペーパーの作り方|一般的な流れと構成

1-1. 制作の流れと、構成の例

ホワイトペーパーは一般に、目的と読み手を決め、構成を組み、執筆とデザインを経て、ダウンロード用のページを作って広告などで届ける、という流れで作ります。構成は、課題の背景、課題の内容と原因、解決策、解決の事例、自社サービスの紹介、という順に並べるのが定番です(出典:SalesNow「ホワイトペーパーの書き方」)。

この定番の構成を、ページ単位に落とすと、たとえば次のようになります。最初のページに「読むと何がわかるか」を、最後のページに「読み手が自社で検討するためのチェック項目」を置いているのは、4章で紹介する書き方につなげるためです。

ページ

書く内容

1

表紙と、この資料を読むと何がわかるか

2

読み手が直面している課題

3

課題が起きる背景と原因

4

解決の考え方と、具体的な方法

5

導入事例やデータによる裏づけ

6

自社で検討するためのチェック項目と、自社サービスの紹介

これは一つの例で、すべてのホワイトペーパーに当てはまる正解ではありません。テーマや読み手によって、ページを足したり入れ替えたりします。

1-2. 流れどおりに作っても、期待外れは起きる

この流れと構成に、大きな間違いはありません。ただ、流れの後半、ダウンロード用のページと広告には力が入りやすい一方で、中身がその期待に見合っているかは見落とされがちです。

ダウンロード数は、広告とページの出来で決まります。中身の出来は、ダウンロードしたあとで読み手が判断します。数字に表れるのは前者だけです。2章からは、数字に表れない後者で何が起きているのかを見ていきます。

2. 課題と背景|ダウンロードした人の8割強が、期待外れを経験している

2-1. 期待外れの理由の1位は、「広告と中身が違う」

ホワイトペーパー向けの調査サービスを提供するIDEATECHが、2025年4月に、個人情報を入力してホワイトペーパーをダウンロードしたことのあるBtoB企業の経営者・マーケ担当者308人に尋ねています。ダウンロードした資料が期待外れだと感じたことが「よくある」と答えた人は28.9%、「時々ある」は55.6%で、合わせて8割を超えました。8割の資料が期待外れだったという意味ではなく、期待外れを感じたことがある人が8割を超えた、という結果です(出典:SalesZine「8割以上が、個人情報と引き換えのダウンロードコンテンツに『がっかり』/IDEATECH調査」)。

期待外れだった理由の上位は、次の3つです。

期待外れの理由

割合

タイトルや広告と、中身が違った

44.2%

すでに知っている内容だった

41.2%

表面的で、具体性がなかった

40.0%

1位は、中身の質そのものより、広告で約束したことと中身のずれです。広告とページに力を入れるほど、このずれは大きくなりかねません。

2-2. 満足した理由の1位は、「自社の課題に合っていた」

同じ調査で、満足した理由の1位は「自社の課題に合っていた」(51.7%)でした。2位は「データや事例が豊富で信頼できた」(48.3%)、3位は「具体的で実践できる情報だった」(42.5%)です。

期待外れの理由の2位・3位(「すでに知っている」「表面的」)と、満足の理由(「自社の課題に合っていた」「具体的で実践できる」)は、対になっています。読み手は、知っている一般論ではなく、自分の会社に当てはめられる具体的な材料を求めています。

期待外れの理由の1位(広告と中身のずれ)は、これとは別の問題です。広告の約束を果たしていても、中身が一般論にとどまれば満足にはつながりません。広告の約束と中身が一致しているか、中身が読み手の課題に合っているか。4章では、この二つを分けて扱います。

3. 課題の構造|期待外れは、ゼロではなくマイナスから始まる

3-1. 質の低い資料は、会社への評価を下げる

期待外れの資料は、読まれなかった資料と同じではありません。会社の評価を下げます。

EdelmanとLinkedInが2017年に意思決定者1,300人を対象に行った調査では、質が低い、洞察がない、的外れな情報発信を見て、その会社への敬意が下がったと答えた人が45%いました。経営層では53%です。そうした情報発信のせいで、その会社への発注が減ったと答えた人も30%いました(出典:Edelman「New Research from Edelman and LinkedIn」(英語))。

逆も成り立ちます。2-1のIDEATECHの調査では、営業先から質の高いコンテンツを受け取ると発注の意欲が高まると答えた人が約8割いました。理由の1位は「サービスの質が想像できるから」(63.3%)です。ホワイトペーパーは、その会社の仕事ぶりの見本として読まれています。

3-2. 本数を増やすほど、質は追いつきにくくなる

海外でも、状況は似ています。Informa Techが2023年に米英のIT系の経営層150人に尋ねた調査では、ダウンロードと引き換えに得たコンテンツの価値に「よく」「時々」失望すると答えた人が71%でした(出典:Informa Tech「Trust in Marketing Index」(英語))。

ダウンロード数を目標にすると、本数を増やす方向に力がかかります。限られた人数で本数を増やせば、一本ごとに使える時間は減り、一般論や知っている話で紙幅を埋めることになりがちです。その一本一本が、2-1の「すでに知っている」「表面的」という落胆を生みます。

ただし、制作本数を増やすこと自体が評価を下げるとまでは、上の調査からは言えません。本数と評価の関係を直接確かめた調査は見当たりませんでした。調査で確かめられているのは、期待外れを感じたことがある人が多数派であること、質の低い情報発信が会社の評価と発注を下げることです。そこから言えるのは、一本ごとの中身が読み手の期待に届かなければ、ダウンロード数を増やしても、会社への評価を損なうおそれがあるということです。本数を増やすことと、一本ごとの質を保つことは、分けて考える必要があります。

さらに、ダウンロード数そのものも、見た目ほどの価値がないことがあります。営業からの連絡を避けるために、偽の情報や不完全な情報をフォームに入れて資料だけを取る買い手がいる、とForresterは指摘しています(出典:Forrester「B2B Marketers Should Gate Later And Less」(英語))。

3-3. 翻訳しただけの資料は、読み手の言葉と前提に届かない

期待外れは、手を抜いたときだけに起きるわけではありません。ていねいに作った資料でも、読み手の言葉と前提に合っていなければ起きます。

外資系企業で、買収によってグループに加わった会社の、製薬向け品質管理ソリューションを担当していたころの話です。日本市場のマーケティングは、海外にいるアジア太平洋地域の担当者が受け持っていました。SNSに広告を出し、ホワイトペーパーをダウンロードさせる、という進め方です。ところが、その資料がとても読みづらいものでした。

一つは文章です。翻訳が間違っていたわけではありません。英語は、主語と動詞のあとに情報を次々と付け足していく書き方が多く、一文が長くなりがちです。それをそのまま訳すと、主語のあとになかなか動詞が来ず、結局何をするのかがわからなくなります。翻訳会社は、原文が1文なら1文のまま訳すので、勝手に分けることができなかったのだと思います。

もう一つは、考え方の違いです。日米の製薬会社は、国際的に共通するGMPの原則や品質管理の考え方を重視していますが、具体的な規制要件や運用には違いがあります。

たとえば変更管理では、変更による品質リスクを評価し、品質システムに基づいて判断することが重要です。日本の製薬会社では、そのリスク評価を、変更内容が製造販売承認書に記載された事項にどう関わるのか、一部変更承認申請と軽微変更届のどちらにあたるのか、という薬事手続きの判断とも結びつけて考える場面が多くありました。

こうした違いは、品質管理の基本原則そのものが異なるということではありません。しかし、海外の資料をそのまま翻訳するだけでは、日本の製薬会社が実際の業務で判断しなければならない論点が十分に伝わらず、ピンとこない部分がありました。

私は原文を取り寄せて、すべて訳し直しました。長い文は読みやすい長さに分け、日本の製薬会社の考え方に合わない部分は書き直しました。その資料を既存の顧客やパートナー企業に渡したところ、「やっと何が書いてあるのかわかった」と言われました。

広告の出来がどれだけよくても、開いた資料が読みづらく、自分たちの前提に合っていなければ、読み手には期待外れとして残ります。

4. 解決策|期待を裏切らないホワイトペーパーの書き方

4-1. 広告とタイトルで約束したことを、中身で果たす

期待外れの理由の1位は、広告と中身のずれでした。広告やタイトルを作る前に、「この資料を読むと、読み手は何がわかるのか」を一文で書いておきます。そのうえで、各章がその一文に答えているかを確かめます。

答えられていない章があれば、中身を足すか、広告とタイトルの約束を小さくします。広告で大きく約束して中身が追いつかないより、約束を控えめにして中身で上回るほうが、読み手の評価は上がります。

4-2. 「知っている話」で紙幅を埋めない

「すでに知っている内容だった」は、期待外れの理由の2位でした。ダウンロードする人の多くは、そのテーマについて基本的なことはすでに調べています。定義や市場の一般論に紙幅を使うほど、読み手は「知っている」と感じます。

一般論は短くまとめ、読み手が自分では手に入れにくい材料に紙幅を回します。独自の調査データ、導入した会社がどんな条件で判断したのかという経緯、その業界に特有の事情などです。

4-3. 読み手の業界の言葉と前提で書く

満足の理由の1位は、「自社の課題に合っていた」でした。読み手が自分の会社に当てはめられるように、その業界の言葉と前提で書きます。

海外の資料を使うときは、翻訳ではなく書き直すつもりで手を入れます。3-3の経験から、確かめる点は二つです。

  • 長い文を、読みやすい長さに分けているか

  • 海外と日本で前提が違う点(規制、商習慣、意思決定の進め方など)を、日本の読み手の前提に合わせているか

業界の言葉の置き換え方は、導入事例について書いた別のコラムでも紹介しています。
👉 導入事例の作り方|営業に使われない理由と、「うちとは違う」を越える構成

4-4. 本数とダウンロード数だけで評価しない

ダウンロード数だけを目標にすると、本数を増やす方向に力がかかり、3-2で見たように一本ごとの質が追いつきにくくなります。

本数を増やすことよりも、一本ごとの質を保つことを優先します。質を犠牲にしてまで本数を増やさない、ということです。成果を見るときも、ダウンロード数に加えて、読んだ人がその後どう動いたかを見る指標を置きます。資料が顧客の社内に持ち込まれ、検討に使われたかどうかです。

ダウンロードした資料が、顧客の社内でどう使われるのか、その場面に合わせた資料の組み方は、別のコラムで整理しています。
👉 ホワイトペーパーや営業資料が商談につながらない理由|社内に回ったときに効く資料の設計

まとめ

ホワイトペーパーのダウンロード数は、広告とページの出来で決まります。しかし、ダウンロードした人の8割強が期待外れを感じたことがあり、質の低い資料は会社への評価と発注を下げます。ダウンロード数が増える裏で、評価を下げた読み手が増えているかもしれません。

まずは、いま配っているホワイトペーパーを一本開いて、広告やタイトルで約束していることに、中身が答えているかを確かめてみてください。答えられていない章が、次に手を入れるところです。

【次に読むべきコラム】
👉 ホワイトペーパーや営業資料が商談につながらない理由|社内に回ったときに効く資料の設計

【参考】CaseScenario™なら

ホワイトペーパーを読んだ顧客担当者が、営業が同席していない社内の会議でも、「この取り組みは、自社のどの経営課題につながるのか」を説明できる。CaseScenario™は、そのための書面を作るサービスです。

20業界の経営課題テンプレートをベースに、業務課題を業界共通の経営課題に接続し、市場環境から効果までの因果を一続きの書面にします。手元にあるホワイトペーパーや導入事例は書き換えず、その上に業界共通の経営課題の層を置いて、検討を始めるための論点を整えます。

CaseScenario™は、ホワイトペーパーそのものを制作・翻訳するサービスではありません。業界共通の経営課題を起点にした、初期段階の設計図です。個社固有の投資判断の材料は、その先の個別提案で整えます。

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