

はじめに|新製品のリリースなのに活気が出ない
新製品や新サービスのリリース日が正式に決まった直後、社内が意外と静かになる、と感じたことはないでしょうか。
カタログの制作やプレスリリースの調整、ウェビナーの企画までは着々と進んでいるのに、営業現場で実際に使える提案シナリオだけが、いつまでも形にならない。誰かが手を挙げれば動き出しそうな話なのに、気づけばリリース日を迎えてしまい、案件が思うように増えていかない。
この停滞は、担当者の怠慢や部門間の仲の悪さが原因ではありません。マーケティング・プリセールス・営業のそれぞれが、自部門の役割を正しく果たしているにもかかわらず、なぜか誰も着手しないまま時間だけが過ぎていく、構造的な空白が起きているのです。
このコラムでは、その空白がなぜ生まれるのかを整理したうえで、次のローンチに向けて何を先に決めておけばよいのかをお伝えします。
1. 課題と背景|新製品ローンチのたびに繰り返される準備の停滞
1-1. 頻度の低さが招く「標準化されないプロセス」
新製品・新サービスのローンチは、企業によって頻度に差はあるものの、日常業務のように高い頻度で繰り返されるものではありません。頻度が低いということは、初期提案の準備を誰がどの順番で進めるかというプロセスが、日常業務のようにはルーチン化されないということでもあります。
毎回のローンチのたびに、体制をほぼゼロから組み直すことになり、前回どのように進めたかという記憶や記録も、担当者の異動とともに薄れていきます。
結果として、リリース日が確定してから初めて「誰が提案シナリオを作るのか」という話し合いが始まり、限られた準備期間の多くがこの調整だけで消費されてしまいます。
恒常的に発生する業務であれば自然と役割が固定されていきますが、頻度の低い業務は、組織図のどこにも明確な置き場所を持たないまま、そのつど関係者の間で押し付け合いが起きやすい構造を抱えています。
1-2. マーケ・プリセールス・セールスそれぞれの言い分
実際の現場では、三者それぞれの言い分に一定の合理性があります。
マーケティングにとって、案件数(パイプライン)はKPIとされることが多く、プリセールスに提案シナリオの準備を急がせます。しかし自分たちが作るのは製品カタログやプレス向け資料までであり、提案シナリオそのものはプリセールスや営業の仕事だと捉えている場合が少なくありません。
プリセールスは、目の前にある案件のクロージングがKPIの中心とされることが多く、まだ案件化していない新製品の提案シナリオを事前に用意することは、評価に直接結びつかないと考えがちです。
営業は、当面はカタログを配布しておけば活動の体裁は整うため、顧客から詳しい説明を求められた段階で初めて、プリセールスに作成を依頼しようとします。
三者とも、自分の役割の範囲では正しく動いているつもりでいるからこそ、誰も先に手を動かさないまま時間だけが過ぎていきます。
2. 課題の構造|なぜ誰も着手しないのか
2-1. KPIの非対称性とオーナー不在が重なる空白
この停滞の背景には、KPIの非対称性という構造があります。
マーケティングは案件数(パイプライン)で評価される一方、その案件を前に進める責任までは負っていません。プリセールスは受注で評価される一方、案件が生まれる前の提案シナリオを事前に整えておく責任までは負っていません。
案件数にも受注にも直接は紐づかない「経営課題に接続した初期提案を設計する」という工程は、どちらのKPIからも見えない位置に置かれてしまいます。
加えて、この工程にはそもそも明確なオーナーが定義されていないため、三部門のいずれかが成り行きで引き受けるという展開も起きにくいのです。
誰かが止めているわけではありません。それぞれが前に進もうとしているのに、それぞれの合理的な判断の結果として、初期提案の設計だけが誰の仕事にもならないのです。
2-2. 力技で埋めた空白は汎用性を持たない
この空白を埋めるために、現場ではしばしば力技が使われます。重要顧客への訪問に営業責任者がプリセールスを同席させ、その場での説明対応を通じて提案準備を前倒しさせる、という動き方です。
役員会やステコミで案件不足が指摘されそうな局面では、新製品のプロモーションと称して重要顧客をローラー訪問し、同様にプリセールスの同席を促す動きも見られます。
こうした対応は一時的にシナリオを生み出しますが、いずれも特定の顧客に合わせて個別に作られたものであり、他の顧客への転用を前提に設計されていません。
結果として、別の商談で使おうとするたびに大幅に手を入れることになり、空白そのものは埋まらないまま、その場しのぎの対応を繰り返すたびに、個別対応のコストだけが積み上がっていきます。
3. 解決策|何を変えれば前に進むのか
3-1. 空白地帯を「明示的な工程」として定義する
三すくみを解く出発点は、初期提案の設計を、特定の部門の役割として押し付けることではなく、独立した「工程」として明示的に定義することです。
マーケ・プリセールス・営業のいずれかの業務の延長線上に位置づけるのではなく、「経営課題に接続した初期提案を用意する」という作業そのものを切り出し、何をもって完了とするかという基準を先に決めておきます。
工程として輪郭を与えられていない限り、各部門はそれぞれのKPIに沿って合理的に動き続けるだけであり、話し合いを重ねても自然に解消される構造ではありません。
誰が作るかを事後的に調整するのではなく、先に「何を、どこまでやれば完了か」を確定させておくことで、力技に頼らずに準備を前進させられます。
3-2. ローンチ決定時に着手タイミングとオーナーを先に握る
工程を定義したら、次に着手のタイミングとオーナーを先に決めておきます。
ローンチの日程が確定した時点で、初期提案の設計にいつ着手し、いつまでに完成させるか、誰がその工程を担うのかを、カタログやプレスリリースの準備と同じスケジュール上に乗せます。
リリース直前になってから議論を始めると、限られた準備期間の多くが役割調整だけで消費され、結果として特定の顧客向けに間に合わせで作る形に戻ってしまいます。
あらかじめ着手時期とオーナーを握っておくことで、リリース後に個別対応へ流れることを防ぎ、複数の商談で使い回せる汎用性のあるシナリオを準備する時間を確保できます。
まとめ
新製品・新サービスのローンチのたびに、同じような停滞を繰り返しているとすれば、それは担当者の力不足ではなく、工程と着手時期があらかじめ決まっていないという、準備の設計そのものに原因があるのかもしれません。
次のローンチが決まったタイミングで、初期提案の設計を誰がいつまでに用意するのかを、カタログやプレスリリースの準備と並べて先に決めておくことから始めてみてください。それだけでも、リリース後の停滞はかなり変わってくるはずです。
【参考】CaseScenario™なら
ここまでの打ち手は、社内での役割調整を前提としています。それが難しい場合は、初期提案の設計を社外に切り出すという選択肢もあります。
三すくみは、提案の質を高めれば解消するという問題ではありません。経営課題に接続した初期提案を設計する工程そのものが、どの部門の担当範囲にも入っていないために起きています。
CaseScenario™は、社内のKPIや役割分担を変えずに、その工程だけを社外で担います。しかも案件が生まれる前の段階で、複数の商談に使い回せる設計図として用意するため、案件化・検討開始・承認前進に必要な判断材料を、あらかじめ整えておくことができます。





