商品の価値を高めるブランド戦略 - 価値の総和とは? ブランド化に向けた価値の捉え方

透明のグラスに赤ワインを注ぐ画像。注ぎ口と注がれるワインがアップで撮影されている。その画像の上に「商品の価値を高めるブランド戦略 - 価値の総和とは? ブランド化に向けた価値の捉え方」と書かれている。

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。

宮崎祥一のプロフィール写真


今日の論点


なぜ一流ブランドは高額でも売れるのか?

 みなさん「一流ブランド」と聞いて何を連想しますか?

エルメス、グッチ、フェラーリ、ローレックスなどでしょうか。一般的な商品と比べると「ホンマに誰か買うの?」と、ウッカリ声が出るような値付けとなっています。

 

しかし、購入する人たちは少なくありません。一流ブランドと一般的な商品との価格差は、一体どこで生まれるのか、一緒に考えてみましょう。



目次


1. 価値の総和を最大化しろ!


陳列されたワインボトル

1.1 価格と価値の関係性


価格と価値の概念図

はじめに「価格」と「価値」の関係性について確認しておきましょう。販売側が設定した金額のことを「価格」と呼び、顧客側が感じた有用性のことを「価値」と呼びます。

 

商品やサービスをある価格で購入したときに、購入前に想像していたよりも「大きな価値があった」と感じると、顧客満足度が高まります。「価値」が「価格」を上回れば上回るほど、大きな満足度が得られるのです。

 

上記の例でいうと、商品Aは金額に見合った価値を提供出来ていないので、リピートされることはありません。一方、商品Cの場合は顧客満足度が高く、仮に少し値上げしたとしても、リピートしてもらえることになります。


1.2 情緒的な価値を積み上げて最大化を図る


価値の積み上げの概念図

上記の図をご覧ください。価値を積み上げて、その総和を最大化すれば、顧客満足度が高まります。

 

商品はさまざまな価値を持っているにも関わらず、それを顧客に伝えることが出来ていないケースは多く見られます。たとえばワインを例にすると、下記のような「伝えていない価値」が考えられます。

  • テレビで取り上げられたことがある
  • 王室御用達
  • 雑誌に取り上げられたことがある
  • 有名人が飲んでいる
  • 品評会で賞をもらったことがある

 

なにかの賞を受賞していたり、メディアに取り上げられたりしたのであれば、それが過去の話だとしても、販促資料などを使って顧客にアピールした方が良いでしょう。

 

また、新たに価値を追加する方法も、いくつか方法があります。例えば、食品メーカーがよく使用する「モンド・セレクション賞」なども、そのうちのひとつです。十数万円の費用を支払えば誰でも審査を受けることができる上、金賞の受賞率は約50%ですので、かなりコスパの高いプロモーションの方法だと言えます。

 

あと、有名人が飲んでいると言うのも、健康食品などではよく見かけるプロモーションです。確かに飲んでいるのでしょうが、ギャラをもらって仕事として飲んでいるのです。

 

価値を付与する方法は、探せばいくらでも見つかるものです。人によって価値の基準は異なりますので、一概には言えないのですが、伝えていない価値を集めて、それを全て顧客に伝えることが出来れば、極めて有効な差別化要因となります。



2. 価値を積み上げる理由


アイデアが出たイメージ図

2.1 簡単に模倣できない


価値を積み上げるにあたって重要なことは、機能的な価値だけではなく、情緒的な価値を積み上げるということです。競合他社からすると、機能的な価値は模倣が比較的容易です。競合の商品を分解して構造を調べるといった、リーバースエンジニアリングが実施できるからです。

 

一方、情緒的な価値は模倣が難しく、また比較したところで優劣をつけがたいものですので、独自性をアピールすることが出来ます。


2.2 ストーリー性を付加できる


情緒的な価値には、必ずその背景にストーリーが存在します。仮にどこかの小さな国の王室に、自社商品を納入したことがある場合、そこに至るまでには、紆余曲折があったはずです。それをドキュメンタリーとして文章や動画に落とし込めば、差別化要因とするには十分です。

 

またドキュメンタリーの内容としては、成功体験でなくとも構いません。実際、あなたがテレビで見るドキュメンタリー番組は、解雇された野球選手、売れない芸人、リストラされたサラリーマンだったり、成功とは程遠いストーリーだと思いませんか?

 

ドキュメンタリーとしてストーリーを伝えることは、興味や関心を持ってもらいやすいことに加えて、長期に渡って記憶に残るため、プロモーションとしては、比較的効果を出しやすい方法です。 


2.3 口コミが期待できる


価値が価格を上回った場合、顧客満足度が高まります。この満足度がある一定の閾値を超えた場合、人はそれを誰かに伝えたくなります。自分の感動や興奮を、誰かと共有したくなるのです。これを意図的に行うことを、口コミマーケティングと呼びます。

 

自分のお気に入りの商品やサービスをInstagramに投稿すると、なぜか必要以上に熱が入ったものになる傾向があります。「絶対にオススメ」とか「騙されたと思って試してみろ」などといった言葉が、頻繁に使われるのを見たことがあると思います。

 

ニールセンの調査によると、約9割の人が「友人の推奨を信頼する」と回答していますので、企業としては、この口コミのパワーを無視することは出来ないのです。



3. まとめ


青い海と空

3.1 価値の総和を最大化する


自社の商品をよくよく調べてみると、顧客に伝えていなかった価値が、少なからず見つかるはずです。それらを丹念に拾っていき、顧客に届けることができれば、商品の「価格」を大きく上回る「価値」を提供することができるのです。

 

一歩一歩、丁寧に積み上げて「価値の総和を最大化する」ことが、独自性の高い価値提案となり、引いてはブランド力を高めることにつながります。