アートで地域活性化 - 地域に根ざした文化事業 アートでまちを盛り上げる方法

カラフルなバンダナを付けたアフリカ系女性の横顔の画像。頬にはカラフルなペイントが施されている。その画像の上に「アートで地域活性化 - 地域に根ざした文化事業 アートでまちを盛り上げる方法」と書かれている。

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。

宮崎祥一のプロフィール写真

目次


1. はじめに


キャンバスに向かって絵を描く男性

1-1. 地域活性化に焦点を当てたオーセンティックマーケティングの紹介


地域活性化は多くの自治体や組織が取り組んでいる課題であり、その解決策の一つとして注目されているのがオーセンティックマーケティング(Authentic Marketing)です。

 

オーセンティックマーケティングとは、商品やサービスを売るだけでなく、その背景にある価値や思想を共有し、消費者と真実のつながりを築くマーケティング手法です。具体的には、企業のビジョンや価値観を消費者に伝え、共感を得て口コミを広げることを目指します。

 

この手法は、アートを通じて地域活性化を図る際に特に有効とされています。なぜなら、アート自体が個々のアーティストの価値観や視点を反映しているからです。その価値を共有し、地域住民や訪れる人々とつながりを築くことで、地域の魅力を最大限に引き出すことが可能になります。

 

今回の記事では、このオーセンティックマーケティングを活用し、アートを通じて地域活性化を実現する方法を深掘りします。具体的な事例や実践方法、さらには取り組む際の注意点などを解説していきますので、地域活性化に関わる方々の参考になれば幸いです。



2.  地域活性化とアートビジネスの現状


両手を広げたバレリーナを書いたオレンジ調の絵

2-1. 地域活性化の課題とアートの役割


地域活性化を図る上で直面する主な課題は、地域の魅力をうまく伝え、新たな訪問者や居住者を引きつけることです。また、地域の魅力を外部に発信するだけでなく、地域内の人々がその魅力を再認識し、地域に対する愛着を深めることも重要です。

 

ここでアートが重要な役割を果たします。アートは一種の言語であり、様々な価値や思想、感情を具現化し、伝える手段です。地域固有の文化や風景、伝統、人々の生活といった「見えない価値」をアートを通じて「見える形」に変換します。その結果、地域の魅力が具体的に表現され、人々の心に直接訴えかけることが可能となります。

 

具体的には、地元のアーティストによるアートイベントやワークショップを開催する、地元の資源を活用したアート作品を制作・展示する、地元のストーリーを描いた演劇や映画を上映するなどの取り組みが考えられます。

 

また、アート活動は地域内の交流やコミュニケーションを促進し、地域コミュニティの結束力を高める効果もあります。地元の人々が共同でアートプロジェクトに参加することで、地域に対する誇りや愛着感が深まり、自主的な地域活性化の動きを生み出すきっかけにもなります。

 

このようにアートは、地域活性化の課題解決に大いに貢献できます。次節では、その具体的な方法をオーセンティックマーケティングの観点から探っていきましょう。


2-2. オーセンティックマーケティング(Authentic Marketing)の理解と活用


地域活性化を進める上での一つのアプローチとしてオーセンティックマーケティング(Authentic Marketing)を紹介しましたが、これを具体的にどのように理解し、活用していくべきでしょうか。

 

まず、オーセンティックマーケティングとは、従来の商品やサービスの性能や価格を中心にしたマーケティングから一歩進んだ手法で、商品やサービスそのものだけでなく、その背景にある「価値」や「思想」を共有し、消費者と深いつながりを築くことを目指します。企業の場合、そのビジョンや価値観、社会への貢献などが該当します。

 

地域活性化の文脈で考えると、オーセンティックマーケティングは地域そのものの魅力や特性、歴史、文化など、地域の「物語」を共有し、訪れる人々と地域との深いつながりを築くことを意味します。

 

具体的な活用法としては、地域の物語を形にしたアート作品を作成し、展示することや、地域の魅力を伝えるイベントを開催することなどが考えられます。また、地域内外の人々が共に参加できるアートワークショップや地域資源を活用したプロジェクトを立ち上げ、参加者自身が地域の価値を体験し、その魅力を広く共有できる仕組みを作ることも重要です。

 

このような活動を通じて、地域の魅力が広く知られ、口コミが生まれることで地域活性化が進みます。そして、それは地域の課題解決だけでなく、地域コミュニティの結束強化や新たな地域資源の発見、地域ブランドの形成など、さまざまな追加的な効果をもたらします。

 


2-3. アートビジネスとオーセンティックマーケティングの関連性


アートビジネスとオーセンティックマーケティングの関連性を理解するためには、アートが持つ特性とそのマーケティングへの影響を探る必要があります。

 

アートは、個々の作品が持つ美的価値だけでなく、作者の意図や表現したいメッセージ、背景にある文化や哲学、社会的な意義など、多層的な「価値」を含んでいます。それらは鑑賞者に深い感動や共感を引き起こし、人々と作品やアーティストとの間に強い絆を生み出します。

 

この特性は、オーセンティックマーケティングの考え方と深く一致しています。オーセンティックマーケティングでは、製品やサービス自体の価値だけでなく、その背後にあるストーリーや思想、価値観などを共有し、顧客との深い関係を築くことが重視されます。

 

つまり、アートビジネスはその本質的な特性からオーセンティックマーケティングの理想的な舞台とも言えます。地域活性化の観点から見れば、アートビジネスは地域の魅力や独自性、地元の人々の思いや物語を表現し、それを共有する強力な手段です。

 

アート作品を通じて地域の物語を共有し、それが口コミとなって広がることで、地域全体の価値が高まり、訪れる人々の経験が豊かになります。そして、地域と訪問者の間の深いつながりが生まれ、持続的な地域活性化を実現することが可能となります。



3. 地域活性化の課題とアートビジネス


パソコンと課題のネットワーク

3-1. 地域活性化の困難さとその要因


地域活性化は多くのケースで難易度が高いものです。その困難さの背後には、さまざまな要因が存在します。

 

1. 訴求ポイントの明確化: 地域の魅力や独自性を具体的に表現し、それを効果的に伝えることは容易なことではありません。地域内に存在する価値やストーリーが抽象的であったり、地元の人々にしか理解できないようなものである場合、外部の人々にその魅力を伝えることは困難になります。

 

2. コミュニケーションの欠如: 地域の情報が内部に閉じ込められている場合、その地域の魅力を広く共有するための効果的なコミュニケーションが欠けていると言えます。積極的な情報発信やコミュニケーションがなければ、地域の魅力は知られることなく、活性化の機会を逃すことになります。

 

3. 資源の不足: 地域活性化には様々な資源が必要です。財政的な資源、人的な資源、時間、スキルなどが挙げられます。これらの資源が不足している地域では、活性化に向けたプロジェクトの実行が困難になります。

 

4. 持続性の確保: 単発のイベントやプロジェクトは一時的な活気をもたらしますが、長期的な地域活性化を達成するためには、持続的な活動とその成果の確保が重要となります。しかし、持続性を確保することは容易なことではありません。

 

これらの要因が重なることで地域活性化は困難さを増しています。しかし、これから説明するように、オーセンティックマーケティングとアートビジネスの組み合わせを活用すれば、これらの困難を克服し、地域の魅力を最大限に引き出すことが可能です。



4. オーセンティックマーケティングを用いた解決策


Solutionと書かれたパズルのピース

4-1. アートを通じたオーセンティックマーケティングの具体的な手法


アートを通じたオーセンティックマーケティングには、以下のような具体的な手法があります。

 

1. ストーリーテリング: アート作品自体、またはその制作過程、アーティストの思想や背景などには、一般的には見えない「物語」が存在します。これらの物語を明確に伝えることで、作品の理解を深め、感情的なつながりを築きます。さらに、これらの物語は地域の歴史、文化、独自性と結びついている場合が多く、地域自体の魅力を強調する効果もあります。

 

2. 地域との結びつきの強化: 地域の人々や企業をアートプロジェクトに関与させることで、地域全体の一体感を強化し、アートと地域の間の結びつきを深めます。例えば、地域の素材を使用したアート作品の制作、地域企業のスポンサーシップ、地域住民の参加型のアートイベントなどがあります。

 

3. アートのアクセシビリティ向上: アート作品をもっと身近に感じる機会を提供することで、認知度と理解度を高めます。例えば、アートギャラリーや美術館だけでなく、公共の場所にアートを展示したり、地域のイベントにアートを組み込むことが考えられます。

 

4. 口コミの促進: アート体験を通じて得られた感動や新たな発見は、人々が自然と他の人々と共有したくなるものです。これを促進するためには、SNSでのシェアを奨励したり、体験を共有できるプラットフォームを提供したりします。

 

これらの手法を活用することで、アートを通じたオーセンティックマーケティングは、地域活性化とアートビジネスの課題を克服し、両者を一層強化することが可能となります。

 


4-2. なぜオーセンティックマーケティングが効果的なのか?


オーセンティックマーケティングは、人々の情緒や意識に働きかけ、深い関与と共感を生むことを目指しています。その理由とその効果について、以下のように説明します。

 

1. 感情的な結びつき: ストーリーテリングや共有体験は、人々が製品やサービス、地域に対して深い感情的な結びつきを持つことを可能にします。これは、単なる消費から一歩進んだ、より高いレベルの関与を生むことができます。

 

2. 地域の価値の強調: オーセンティックマーケティングは、地域の特性や独自性を強調し、その価値を明確に伝えることができます。これにより、地域への認識と理解を深め、地域に対する愛着を育てることができます。

 

3. 口コミによる自然な拡散: オーセンティックマーケティングは、人々が自然に体験を共有したくなるような経験を提供します。この口コミ効果は、広告やプロモーションよりも信頼性が高く、効果的な拡散手段となります。

 

4. 持続可能な成長: オーセンティックマーケティングは、地域や企業が長期的な視点で成長を目指す際の有力な手段となります。顧客や地域住民との深い関係を築き、持続的な支持を得ることができます。

 

これらの理由から、オーセンティックマーケティングは、地域活性化やアートビジネスの課題を解決する効果的な手法と言えます。そして、それは単に売り上げを上げるためだけでなく、より広い視点での地域の魅力向上や地域コミュニティの強化に寄与します。



5. オーセンティックマーケティングの成功事例


直島の海辺の夕焼け

5-1. 地域を活性化したアートビジネスの事例紹介


本日紹介するのは、「ベネッセアートサイト直島」です。ここは、アートと地域活性化を見事に結びつけ、多くの人々が訪れる観光地となった成功事例です。

 

直島は元々、産業の衰退と高齢化が進む過疎地でした。そんな直島を見たベネッセホールディングスは、地域の価値を引き立てるための一策として、アートと自然環境を融合させるプロジェクトを立ち上げました。その結果、「ベネッセアートサイト直島」という国際的なアートの聖地が誕生しました。

 

安藤忠雄氏らが設計した施設は自然に溶け込むように配置され、その中には地元の自然環境と調和したアート作品も展示されています。これにより、訪れる人々はただアートを鑑賞するだけでなく、その地の自然と文化を五感で感じ取ることができます。アート作品はただの芸術品ではなく、地域の物語や価値を伝える手段となっています。

 

ベネッセアートサイト直島の取り組みにより、観光客は増え、地域経済は活性化しました。アートによって引き寄せられた人々は、その地域の魅力を再認識し、地域への愛着を深める結果となりました。また、地元の住民と訪問者との間でのコミュニケーションが生まれ、地域共有の価値が育まれました。

 

この事例は、オーセンティックマーケティングの考え方が如何に地域活性化に貢献できるかを示しています。アートを通じて地域の魅力を共有し、感情的な結びつきを生み出すことで、地域を訪れる人々が自然とその価値を口に出し、口コミとなって広がるのです。これが、ベネッセアートサイト直島が地域を活性化した一つの秘訣と言えるでしょう。


5-2. 事例の成功要因とオーセンティックマーケティングの関連性


ベネッセアートサイト直島の成功は、オーセンティックマーケティングの考え方を活用した結果と言えます。その要因を見てみましょう。

 

1. 地域の魅力をアートを通じて発信:直島の自然美と地元の文化を、アートを媒体として効果的に伝えることができました。これにより、訪れた人々はただアートを楽しむだけでなく、地域自体の魅力を体験し、その価値を共有することができました。

 

2. 感情的な結びつきの創出:アートという手段を通じて地域の魅力を体感することで、訪問者は地域に感情的な結びつきを感じました。この結びつきが強いほど、人々は自然とその地域について話すことが多くなります。つまり、感情的な結びつきが口コミを生み出す原動力となったのです。

 

3. 地域との対話の促進:ベネッセアートサイト直島の活動は、地元住民と訪問者の間での対話を促進しました。これにより、地域と訪問者が相互に価値を共有し、地域が魅力的であるという共感を広げることが可能となりました。

 

これらの要素はすべて、オーセンティックマーケティングの核心をなすものであり、地域活性化の重要な要素となっています。それは単に商品やサービスを売るのではなく、地域そのものの魅力と価値を発信し、感情的な結びつきを通じて人々と地域をつなぐ活動なのです。

 

ベネッセアートサイト直島の成功は、オーセンティックマーケティングが地域活性化にどれほど効果的であるかを具体的に示しています。そしてそれは、私たちがどのようにして地域の課題を解決し、新たな価値を創出するかについての貴重な示唆を提供してくれます。



6. まとめ


まとめを指さす女性

6-1. アートを通じた地域活性化の具体的なアクションの呼びかけ


今こそ、アートを通じた地域活性化のための具体的なアクションを起こす時です。地域に根ざした文化事業を通じて、私たちが共有できる価値は無限大です。以下、取り組むべきアクションを再確認します。

 

1. 地域の価値を探求しましょう:あなたの地域に眠る魅力を見つけ出し、その価値を理解しましょう。

 

2. ストーリーテリングを構築しましょう:その価値を伝えるストーリーを作り、多くの人々に共感してもらうためのストーリーテリングに努めましょう。

 

3. 地域住民の参加を促進しましょう:地域の人々が地域の価値を感じ、その魅力を広める役割を果たせるよう、積極的に関わる機会を作りましょう。

 

4. 持続可能な取り組みを計画しましょう:一過性の活動ではなく、地域の成長と共に発展していく取り組みを計画し、実行しましょう。

 

これらのステップは、地域活性化を目指すすべての人々にとって重要なガイドラインとなります。アートというツールを活用して地域の価値を見つけ、共有し、活性化させる。それが、私たちが今、取り組むべきオーセンティックマーケティングの真髄です。

 

一人ひとりの行動が、地域全体の力となり、地域を盛り上げていく。アートを通じたオーセンティックマーケティングの可能性を信じて、一緒に地域活性化に取り組んでいきましょう。