宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー
SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。
今日の論点
「自然にやさしい」という理由で購入を決める
意識の高い人が増えたのか、最近では高機能や低価格ではなく、自分の価値観に合った商品を購入する人が増えています。その中でも特に注目を集めているのが、みなさんご存じの「エコ」です。「環境に配慮している」、「自然にやさしい」という理由で購入する人が少なくありません。
この記事では、エコ意識の高い消費者を引きつけるためのマーケティング戦略について詳しく探ります。環境問題への関心が高まり続ける中で、多くの消費者は持続可能な製品やサービスを求めています。このような消費者のニーズに応えるために、企業は従来のマーケティング手法を見直し、新たなアプローチを採用する必要があります。
ちなみに、実際には全く環境に配慮していないのに、「うちの商品は環境に配慮しているぜ!」といった嘘のラベルを貼る行為を「グリーンウォッシュ」といいます。新しい洗剤の名前じゃないよ。
目次
1-1. エコについて企業は何を求められているのか?
2. 課題の構造
2-1. 課題の根本原因はなに?
3. 解決策
3-1. オーセンティックマーケティングとは?
3-2. オーセンティックマーケティングによる解決策
4. まとめ
4-1. 次の具体的なアクション
1. 課題と背景
1.1 エコについて企業は何を求められているのか?
多くの企業が直面する主要な課題は、消費者のエコ意識の高まりに対応することです。環境問題への関心が高まる中、消費者は持続可能な製品やサービスを求めています。これに対応するため、企業は以下の具体的な課題に取り組む必要があります。
1. 消費者教育と意識向上: 消費者のエコ意識を高めるための情報発信が不十分であること。消費者が環境に優しい選択を理解しやすくするためには、企業からの積極的な教育が求められます。
2. 透明性の確保: 企業が製品の環境影響に関する情報を透明に公開することが不足していること。消費者は企業の環境対策の実態を知りたがっており、信頼関係を築くためには情報の透明性が不可欠です。
3. 価格競争力: 持続可能な製品の開発には高いコストがかかり、そのために製品価格が高くなること。消費者は価格と環境価値のバランスを求めており、価格競争力の維持が課題となります。
4. 消費者の行動変容促進: 消費者のリサイクルや再利用などの行動変容を促すための仕組みが不足していること。消費者の積極的なエコ行動を引き出すための取り組みが求められます。
5. 企業文化の変革: 企業全体で持続可能性を推進する文化が十分に根付いていないこと。社内教育や意識改革が進んでおらず、全社的な取り組みとしての一貫性が欠けていることが課題です。
企業はこれらの課題に取り組むことで、消費者のエコ意識に対応し、持続可能な成長を実現することが求められています。
2. 課題の構造
2.1 課題の根本原因はなに?
エコ意識の高い消費者を引きつけるためのマーケティング戦略において、具体的な課題の根本的な原因を探ることで、問題の深層を理解し、効果的な解決策を見つけることができます。以下に、各課題の根本原因を探り、課題の構造を詳述します。
1. 消費者教育と意識向上
- 根本原因: 多くの消費者は環境問題に対する関心は高いものの、具体的にどのような行動が環境保護に繋がるかを理解していない場合があります。企業の持続可能性に関する取り組みが消費者に十分に伝わっていないことが主な原因です。
- 具体的な事例: ある調査では、消費者の80%が環境に優しい製品を購入したいと考えている一方で、どの製品が本当に環境に優しいかを判断するのに苦労していると答えています。これは、企業の情報発信が不足していることを示しています。
2. 透明性の確保
- 根本原因: 企業の持続可能な取り組みが透明性を欠いていることが多く、消費者が企業の情報を信頼できないことが問題となっています。また、グリーンウォッシュ(環境に配慮していると見せかける行為)によって、消費者の信頼が損なわれることもあります。
- 具体的な事例: ある企業が「環境に優しい」と謳った製品が実際には環境負荷が高い素材を使用していたことが発覚し、消費者からの信頼を失った事例があります。これにより、消費者は他の企業の環境主張にも疑念を抱くようになっています。
3. 価格競争力
- 根本原因: 持続可能な製品の開発には高いコストがかかるため、価格が高く設定されがちです。そのため、消費者がエコフレンドリーな製品に対して対価を払う意欲が低い場合、売上に影響を及ぼします。消費者は価格と価値のバランスを重視するため、企業はその価値を適切に伝えることが求められます。
- 具体的な事例: ある企業が高価格なエコ製品を発売した際、消費者の理解が不足していたために売上が伸び悩んだという事例があります。この企業は、製品の環境価値を伝えるためのマーケティングに投資しなかったことが原因でした。
4. 消費者の行動変容促進
- 根本原因: 消費者が持続可能な行動を取るためには、企業からの明確なガイダンスやインセンティブが必要です。しかし、多くの企業はリサイクルプログラムや製品の再利用キャンペーンを十分に展開していないため、消費者の行動変容が促進されていません。
- 具体的な事例: ある企業がリサイクルプログラムを導入した際、消費者への周知が不足していたため、リサイクル率が低迷しました。効果的なコミュニケーション戦略を欠いていたことが原因です。
5. 企業文化の変革
- 根本原因: 企業全体で持続可能性を推進する文化を構築するためには、トップダウンのアプローチと社員の意識改革が必要です。しかし、多くの企業では持続可能性が一部の部署やプロジェクトに限定され、全社的な取り組みとして定着していないことが問題となっています。
- 具体的な事例: ある企業が持続可能性を重視する戦略を発表したものの、現場レベルでの実践が進まなかった事例があります。これは、社内教育プログラムやワークショップが不十分であったことが原因です。
これらの課題に対処するためには、企業が持続可能な取り組みを包括的かつ透明性を持って実施し、消費者との強固な信頼関係を築くことが重要です。
3. 解決策
3.1 オーセンティックマーケティングとは?
オーセンティックマーケティング(Authentic Marketing)は、企業が持つ独自の価値観やビジョンを消費者と共有し、それに基づいて商品やサービスを提供するマーケティング戦略です。この戦略の核心には、消費者との深い信頼関係を築くことがあり、その結果としてリピート購入や口コミによる新規顧客の獲得が期待されます。特にエコ意識の高い消費者に対しては、この戦略が非常に効果的です。
オーセンティックマーケティングが重視する要素は以下の通りです。
1. 価値観の明確化と共有: 企業がどのような価値観を持ち、それが製品やサービスのどの部分に反映されているのかを消費者に明確に伝えることが重要です。エコ意識の高い消費者に対しては、企業のミッションやビジョン、持続可能性への取り組み、環境保護活動などが特に強調されます。
2. 顧客の価値観の理解: マーケティング活動が成功するためには、消費者の価値観を理解し、それに対応することが重要です。エコ意識の高い消費者が何を大切にし、どのような価値観を共有したいのかを理解することで、より深いつながりを築くことができます。例えば、環境保護やエシカルな製品作りなどが重要な価値観として挙げられます。
3. ストーリーテリング: 企業の価値観を効果的に伝える方法の一つがストーリーテリングです。エモーショナルなストーリーを通じて価値観を伝えることで、顧客との感情的なつながりを強化し、ブランドへのロイヤルティを促進することができます。例えば、製品がどのようにして開発され、どのような背景や思いが込められているのかを伝えることで、消費者の共感を得ることができます。
4. 透明性と誠実さ: 価値観を共有するだけでなく、その価値観が実際の行動や決定にどのように反映されているかを明確にすることが重要です。これには透明性と誠実さが求められ、企業は製品の成分や製造過程、環境負荷に関する情報をオープンにし、自らの言動が一致していることを示す必要があります。
これらの要素を適切に組み合わせることで、企業はオーセンティックマーケティングを成功させ、エコ意識の高い消費者との深い信頼関係を築くことができます。
次に具体的な課題に対するオーセンティックマーケティングを活用した解決策を見ていきましょう。
3.2 オーセンティックマーケティングによる解決策
以下に、各課題に対するオーセンティックマーケティングを活用した具体的な解決策を示します。これにより、企業はエコ意識の高い消費者との関係を強化し、持続可能な成長を実現することができます。
1. 消費者教育と意識向上
- 解決策: 持続可能性に関する情報発信を強化するために、SNSやブログを活用して消費者に環境に優しい選択がどのように環境保護に繋がるかを具体的に伝えます。また、ワークショップやセミナーを開催し、消費者が実際に持続可能な製品を体験できる機会を提供します。
- 具体的な手法: 例えば、製品の製造過程や素材の環境負荷についての詳細な記事を定期的に公開し、消費者に対して教育的なコンテンツを提供します。
2. 透明性の確保
- 解決策: 製品の環境影響に関する情報を透明性を持って公開し、消費者との信頼関係を築きます。第三者認証の取得状況や環境保護活動の詳細を積極的に公開し、グリーンウォッシュを避けるために実際の取り組みを明確に示します。
- 具体的な手法: 企業のウェブサイトや製品パッケージにQRコードを掲載し、消費者が簡単に詳細情報にアクセスできるようにします。また、定期的な環境報告書を発行し、企業の取り組みを具体的に示します。
3. 価格競争力
- 解決策: エコフレンドリーな製品の価値を消費者に理解させるために、オーセンティックマーケティングを活用します。製品の環境価値を強調し、その長期的な経済的メリットを訴求することで、消費者が高価格に対して納得できるようにします。
- 具体的な手法: エコ製品のライフサイクルコストを示し、長期的な節約効果を具体的な数字で説明します。また、環境保護に貢献することの社会的意義を強調する広告キャンペーンを展開します。
4. 消費者の行動変容促進
- 解決策: リサイクルプログラムや製品の再利用キャンペーンを通じて、消費者の行動変容を促進します。特典やインセンティブを提供し、消費者が積極的に持続可能な行動を取るように奨励します。
- 具体的な手法: リサイクルに参加する消費者に対してポイント制度を導入し、貯めたポイントを次回の購入時に割引として利用できるようにします。また、リサイクルや再利用に関する教育イベントを開催し、消費者の意識向上を図ります。
5. 企業文化の変革
- 解決策: 企業全体で持続可能性を推進する文化を構築するために、社内教育プログラムやワークショップを導入します。トップダウンのアプローチで持続可能性を企業戦略の中心に据え、全社的な取り組みとして定着させます。
- 具体的な手法: 社内で持続可能性に関するトレーニングプログラムを実施し、全社員が環境問題に対する知識を深める機会を提供します。また、持続可能性に関する目標を設定し、定期的に進捗を評価する仕組みを導入します。
これらの解決策を実践することで、企業はエコ意識の高い消費者との強固な関係を築き、持続可能な成長を実現することができます。
4. まとめ
4.1 次の具体的なアクション
エコ意識の高い消費者を引きつけるためのマーケティング戦略では、いくつかの重要なポイントがあります。まず、消費者教育と意識向上のために、持続可能性に関する情報発信を強化し、消費者が環境に優しい選択を理解しやすくすることが求められます。また、透明性の確保も重要です。製品の環境影響に関する情報を透明性を持って公開することで、消費者との信頼関係を築くことができます。
さらに、価格競争力を高めるためには、エコフレンドリーな製品の価値を消費者に理解させる必要があります。オーセンティックマーケティングを活用し、製品の環境価値とその長期的な経済的メリットを強調することが効果的です。
最後に、企業文化の変革も不可欠です。企業全体で持続可能性を推進する文化を構築し、社内教育プログラムやワークショップを通じて社員のエコ意識を高めることで、企業全体が一丸となって持続可能な取り組みを進めることができます。これらのポイントを実践することで、企業はエコ意識の高い消費者との強固な関係を築き、持続可能な成長を実現することができます。
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以前、コカ・コーラ社を訪問した時に、缶ではなく瓶のコカ・コーラをいただいたことがあります。ホテルやレストランにエコを配慮して瓶で出荷している聞きました。それにしても、瓶のコカ・コーラは本当に美味しかった。絶対、缶のやつと味が違う。