宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー
SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。
今日の論点
コンサルタントの営業活動
個人で活動されている独立コンサルタントの方が抱える、一番の悩みといえば顧客の新規開拓です。
ブログ記事を書いたり、動画を公開したり、さまざまな販売促進を行いますが、結果は芳しくありません。
今回は独立コンサルタントの新規開拓について、考えてみたいと思います。(私も過去に新規開拓が捗らないといった、全く笑えない経験があります。)
目次
1.1 顧客に課題を聞いてはいけない
2. 小さな課題を解決して実績を作れ
2.1 埋没課題を探せ!
2.2 ヒアリングは負のスパイラルの入り口
3. 埋没課題とコンサルティング領域
3.1 埋没課題の見つけ方
3.2 コンサルティング領域を絞り込め
4. まとめ
4.1 コンサルティング領域の絞り込みが全て
1. 独立コンサルは顧客に課題を聞いてはいけない
1.1 顧客に課題を聞いてはいけない
独立してコンサルティング事務所を設立しても、数ヶ月で経営が傾き始めます。いままでの仕事の実績や人脈がありますので、コンサルティングの提案依頼は多数寄せられるのですが、残念ながら契約には至りません。
では、あなたと契約しない理由は何なのでしょうか。それはソリューションセリングに原因があります。
「貴社が抱えている課題を教えて下さい。」
この質問を投げかけて、課題をヒアリングしたあと解決策を提案する、この手法に問題があるのです。
顧客の課題を解決することが、コンサルタントの役割だとするなら、顧客の課題を聞くのは、正しいアプローチのように思えます。
しかし、よく考えてみてください。競合他社のコンサルタントも同じように課題を聞いています。同じ課題を聞いて解決策を提案するのですから、あなたの提案と競合他社との提案は、とても似た内容にならざるを得ません。
提案の内容が同じであれば、大手コンサルティング会社に依頼します。何か突発的な問題が発生した場合、大手企業であれあば人海戦術で解決を図ることが出来ますが、あなたにはそれが出来ません。だから、あなたに(私にも)仕事が回って来ないのです。
2. 小さな課題を解決して実績を作れ
2.1 埋没課題を探せ!
大手コンサルティング会社と同じ手法を取っていては、絶対に契約を受注することはできません。では一体どうすれば良いのでしょうか。
それは顧客がまだ明確に認識していない課題である「埋没課題」に対して解決策を提案するのです。埋没課題というのは、例えばホットの缶コーヒーを購入したのは、のどが渇いたからではなく、寒いのでカイロとして使いたかったのかもしれません。英字新聞を購入したのは、海外のニュースに関心があるのではなく、プレゼント用のラッピングとして使いたかったのかもしれません。顧客の課題を深堀りすることで、顧客が持つ本当の課題を明らかにすることが大切です。
埋没課題を見つけるといっても、簡単ではないと思われるかもしれませんが、なにも顧客に大変革をもたらすような課題を見つけろと言っているのではありません。小さな課題で構いません。顧客がまだ検討していない課題に、解決策を提案してください。
また、解決策にオリジナリティーは必要ありません。顧客の埋没課題を指摘した時点で、貴方は既に顧客の「先生」となっています。簡単は解決策であっても、堂々と提案を進めてください。これであなたは新たな発見をもたらすコンサルタントとしての地位を確立することができます。
2.2 ヒアリングは負のスパイラルの入り口
このまま課題をヒアリングする手法に固執する場合、あなたのコンサルティング事務所の経営を改善するには、次の二つの方法が考えられます。
まず一つ目はヒアリングの精度を上げることです。質問事項をさらに細かく洗い出し、何度も顧客を訪問するのです。ただ、課題に対する理解は深まりますが、今度は顧客の方がこのヒアリングに嫌気が指し、次第に避けられるようになります。
二つ目は訪問する企業を増やすことです。過去の仕事の延長線上でコンサルティングを行う場合、訪問先を増やすことは難しくないのですが、今度は肝心のコンサルティングを行う時間がなくなります。
このままズルズルと顧客の課題のヒアリングを続けたところで、業績を改善できる可能性はとても低いと言わざるを得ません。何も変えなかったツケを払うことになるのです。
3. 埋没課題とコンサルティング領域
3.1 埋没課題の見つけ方
埋没課題を見つけるには、どこから着手すれば良いのでしょうか。
この埋没課題には共通点があります。それは解決するのが「面倒くさい」ということです。決して「難しい」訳ではありません。たとえば、何かのフォーマットを統一するプロジェクトをスタートする場合、それ自体は簡単なのですが、部門をまたがるので調整が面倒くさい・・・といったような課題が狙い目です。
埋没課題を発掘したあとは、それをどのように顧客に届けるのかを検討します。顧客に届けるにあたって重要なことは、提案書のシナリオです。シナリオが陳腐だと、せっかくの埋没課題を引き立てることが出来ず、顧客の関心を失います。
埋没課題とその解決策に磨きをかけて、顧客に新たな驚きを与えることができれば、契約締結は目の前です。
3.2 コンサルティング領域を絞り込め
埋没課題を解決するプロジェクトを受注した際に、自分のコンサルティング領域をシッカリと伝えておくことが大切です。埋没課題を解決することで、小さいながらも「先生」としての実績を作ったのですから、今後はこれを突破口にして、仕事を広げていきましょう。
このときに重要なのは、自分のコンサルティング領域をできるだけ「狭く絞り込んでおく」ことです。仕事を継続して欲しいと思うあまり、アレもできます、コレもできますと、間口を広げてしまいがちですが、これは販売促進に繋がりません。最もやってはいけないことのひとつです。
コンサルティング領域が広いと、他のコンサルタントと重なる部分が出てきます。この会社から見ると、あなたは付き合い始めたばかりのコンサルタントで、実績と呼べるのはこの埋没課題のプロジェクトだけです。この場合、お客様が何かの仕事を外部に依頼しようとしたときに、思い出すのは「あなた」ではなく、付き合いの深い「別のコンサルタント」です。従って、あなたのことだけしか思い出さないぐらいに、コンサルティング領域を絞り込む必要があるのです。
ちなみに私どもの場合は、マーケティングの専門コンサルとしてスタートしましたが、当初はほとんど依頼を受けることができませんでした。そこでコンサルティング領域を「コモディティ化対策」に絞り込みました。さらに解決策を提供する手段として、目に見えない「ノウハウ」の提供ではなく、目に見える「販促資料の提供」にシフトすることで、ビジネスを軌道に乗せることができました。
コンサルティング領域の絞り込みこそが、新規案件を開拓する際に最も重要なことなのです。あなたもご自分の販促ツールに記載されているコンサルティング領域を、思い切って絞り込んでみてください。必ず突破口が開けます。
4. まとめ
4.1 コンサルティング領域の絞り込みが全て
顧客の課題をヒアリングして解決策を提案しても、ライバルも同じ課題を聞いて提案をしてきます。課題が同じである以上、提案内容も似たものにならざるを得ず、新参者のあなたは契約を受注することができません。
そのために小さな課題を解決して、実績を積み重ねる必要があるのです。その際に重要なことは、コンサルティング領域を絞り込むということです。コンサルティング領域が広いと、実際にプロジェクトを依頼しようとした際に、あなたのことを思い出さないからです。
あなたのことだけしか思い出さないくらい、コンサルティング領域を絞り込んでおけば、提案依頼の件数は少なくなりますが、声がかかれば必ず受注することができるようになります。
まず始めに「あなた」のことだけを思い出す。これが独立コンサルタントが顧客を新規開拓する際の要諦なのです。
(課題を聞いてしまったらダメと解っているのですが、ついウッカリ聞いてしまうこともあります・・・痛恨の一撃。)