宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー
SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。
今日の論点
ポイントカードの実践的な活用方法とは
みなさんポイントカードは何枚ぐらいお持ちですか?
優良顧客を囲い込むために作られたポイントカードですが、多くの企業がその囲い込みに成功しておらず、逆に利益を圧迫するだけのツールになってしまっています。
今回はポイントカードの実践的な活用方法について解説いたします。
(ちなみに私が持っているポイントカードは、美容室のヤツ1枚だけです。予約するときにカード番号聞かれるので。)
目次
1.1 惰性で使われるポイントカード
1.2 本来の目的は優良顧客を増やすこと
2. ポイントカードの効果的な運用方法
2.1 優良顧客を定義する
2.2 優良顧客向けのメリットを設定
2.2.1 客単価を上げる
2.2.2 来店頻度を上げる
2.3 新規の優良顧客を見つけ出す
3. まとめ
3.1 ポイントカードは顧客を知るツール
1. ポイントカードの利用実態
1.1 惰性で使われるポイントカード
マーケティング会社のポイントカードに関する意識調査(※)によると、国民一人当たり平均で約20枚のポイントカードを保有しており、そのうち約10枚を財布に入れて携帯してるそうです。
また、直接的に生活者に商品を販売する業種、いわゆる「B to C」と呼ばれる業種の場合、約8割がポイントカードを導入しています。具体的にはレストランやカフェなどの外食業、衣服や雑貨などの小売業、美容室やホテルなどのサービス業などの業種です。
これだけ普及しているポイントカードですが、これを上手く活用して利益を出していると言える企業は、ほとんど無いと思います。
多くの場合、「他社でも導入しているから」という理由で導入しており、どの程度、利益に貢献しているかどうかなど、全く把握していないのが実情です。
※ ポイントカードに関する意識調査(CCCマーケティング株式会社、2017)
1.2 本来の目的は優良顧客を増やすこと
ポイントカードを導入の目的は、優良顧客を増やすことにあります。
お客様側から見ると、購入や来店ごとにポイントが貯まり、ある一定のポイント数に達すれば、割引や特典など受けることができます。そのメリットを享受するためにリピートします。
また、企業側から見ると、いままで不特定多数でしかなかったお客様を、個人として把握できるため、その情報をさまざまな販促活動に役立てることができます。これにより来店率を高めたり、顧客単価を改善したりすることができるのです。
本来、お客様と企業と、Win-Winの関係になれるポイントカードを使った販売促進なのですが、そもそもスタート時点で運用方法を決めていないため、上手く利益につなげることができないのです。
2. ポイントカードの効果的な運用方法
2.1 優良顧客を定義する
有名な「パレートの法則」によると、売上の80%は20%の優良顧客から生み出されるとされていますが、ポイントカードを発行している業種であれば、概ねこの法則が成り立ちます。
優良顧客を増やしたいという企業は多いのですが、この上位20%の顧客がどのような特徴を持っているのか、理解している企業は多くありません。
優良顧客を増やす最初のステップとして、あなたの会社の優良顧客が、どのような特徴を持っているのかを調べてみましょう。少なくとも「客単価」と「来店頻度」については、正確な数字を把握しておいてください。
ICチップや磁気のポイントカードを導入している場合は、多くの場合、顧客管理システムも導入していると思いますので、直ぐに数字を把握することができます。
紙のポイントカードを導入している場合は、あなたが優良顧客だと考えているお客様を、数人ピックアップして、ポイントカードのスタンプの押印状況などから、客単価と来店頻度を調べてみてください。
2.2 優良顧客向けのメリットを設定
優良顧客の客単価と来店頻度を調べたあとは、優良顧客に対するメリットを設定します。ここで注意していただきたいのは、メリットを設定するのは、全てのお客様に対してではないということです。既にポイントカードを導入していると思いますので、全てのお客様向けのメリットは既に提供しています。従って、優良顧客に対してだけにメリットを設定しましょう。
2.2.1 客単価を上げる
まず始めに、客単価を上げるためのメリットを設定しましょう。優良顧客の客単価を上げるには、より多くの商品やサービスを購入して貰う必要があります。ここで設定するのは「無料お試し◯◯」というメリットです。
全ての顧客に、無料のお試し商品を設定してしまうと、確実に経営を圧迫します。しかし優良顧客は、あなたのお店を気に入っているからこそ優良顧客になっていますので、一般の顧客と比較して、商品を購入する確率が格段に高くなっています。無料のお試し商品を提供しても、成約率が高ければ十分に元が取れるのです。
2.2.2 来店頻度を上げる
次に設定するのは、来店頻度に対するメリットです。仮に優良顧客が4ヶ月に3回来店するのになら、おおよそ40日に1度は来店していることになります。この優良顧客の利得を最大化をするように、期間を限定したメリットを設定してください。具体的には来店時に少額のクーポンを渡し、有効期限を50日ぐらいに設定しておけば良いでしょう。
優良顧客と一般の顧客を比較すると、一般の顧客の方が来店頻度は低い傾向にあります。このクーポンにより一般の顧客が50日以内に来店するなら、それは優良顧客に近づいたと言うことですので、経営的にも十分メリットがある訳です。
クーポンを配布すると経営を圧迫すると言われますが、それは優良顧客と一般の顧客を分けていないからです。優良顧客に対して正しくメリットを設定すれば、非常に有効な販促ツールだと言えます。
2.3 新規の優良顧客を見つけ出す
新規でお客様が来店しても、次回また利用してもらえるかどうかは分かりません。従って新規客の中でにいる優良顧客の候補者には、再来店を促すメリットを設定しておきましょう。
初回の来店時に、優良顧客かどうかを判断する必要はありません。優良顧客の来店頻度が40日だとするなら、50日以内に来店した場合にメリットが得られるように設定しておけば良いのです。
よく「馴染みのお店」と言いますが、アンケート調査の結果によると、およそ3回通うと馴染みの店だと感じるようです。従って2回目と3回目の来店でメリットがあるように設定しておきましょう。
あと、2回目、3回目のメリットを渡す際に、記憶に残るように、なにか仕掛けを作っておく必要があります。
みなさんご自分のカバンや財布の中を見てください。「次回ご利用ください」と渡されたクーポンが数枚入っているはずです。
ある事柄を思い出せる確率を「想起率」と呼びますが、その中でも自発的に思い出せるものを「純粋想起」、また「◯◯を知っていますか?」という質問によって、やっと思い出せるものを「助成想起」と呼びます。
財布の中のクーポンは、それを持っていることは覚えているが、自発的には思い出せないので「助成想起」の領域にあると言えます。
普通にメリットを渡しても、それが「助成想起」の領域に留まっていては効果はありません。「純粋想起」の領域にあってこそ効果が出るのです。業種や業態によってさまざまな方法があるとは思いますが、メリットを渡すときには、必ず記憶に残るような仕掛けをつけるようにしましょう。
3. まとめ
3.1 ポイントカードは顧客を知るツール
ポイントカードは優良顧客のことを知るための、とても便利なツールです。優良顧客のことが詳しくわかれば解るほど、さまざまな販促を実施することができます。
この優良顧客を囲い込む上で、最も重要なことは、優良顧客だけが享受できるメリットを多数用意することです。全ての顧客に提供すると失敗してしまいますので、気をつけてくださいね。
(いっぱい書きましたが、とにかく3回来てもらえればOKです!)