カスタマージャーニーとは?効果的な顧客体験の作り方

外国の地図とその上に乗せられているコンパス

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。

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今日の論点


カスタマージャーニーで購買行動を把握しよう

現代のマーケティングにおいて、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)は成功の鍵を握る重要な要素となっています。商品やサービスの品質はもちろん、顧客がどのようにしてブランドと出会い、購入し、使用し、そして再び利用するかというプロセス全体が、顧客の満足度やロイヤルティに大きな影響を与えます。これを理解し、最適化するための手法として「カスタマージャーニー」が注目されています。

 

カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを知り、検討し、購入し、使用し、リピーターになるまでの一連のプロセスを詳細に描写し、視覚化するものです。これにより、企業は顧客の視点から全体の体験を把握し、各接点(タッチポイント)での課題や改善点を見つけることができます。

 

本ブログでは、カスタマージャーニーの基本的な概念から、その構築方法、実装ステップ、そして実際の成功事例に至るまで、幅広く解説します。



目次


1. カスタマージャーニーとは何か


夕日が当たる砂浜を歩く女性の足元

1.1 カスタマージャーニーとは?


カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知り、購入し、使用し、最終的にリピーターになるまでの一連の購買プロセスを指します。

 

このプロセスには、顧客がさまざまなタッチポイント(顧客接触点)を経て行う情報収集、検討、購入、使用、リピートといった行動や意思決定が含まれます。

 

カスタマージャーニーを分析することで、企業は顧客がどのような経路をたどって購買に至るのかを理解し、適切な対応を取ることができます。基本的にカスタマージャーニーは以下のフェーズで構成されますが、自社の状況に合わせて修正することが大切です。

 

 

/ カスタマージャーニーのフェーズ /

1. 認知(Awareness):顧客が初めてブランドや商品について知る段階です。広告や口コミ、SNSなどを通じてブランドが認知されます。この段階での目標は、顧客にブランドの存在を知らせ、興味を引くことです。

 

2. 興味(Interest):顧客がブランドや商品に興味を持ち、さらに情報を収集する段階です。ウェブサイトの訪問、レビューの確認、製品スペックの比較などが行われます。このフェーズでは、顧客が深い理解を得られるようにすることが重要です。

 

3. 検討(Consideration):顧客が複数の選択肢を比較しながら購買を検討する段階です。この段階では、製品やサービスのメリットを明確に伝え、他社製品との差別化を図ることが求められます。

 

4. 購入(Purchase):顧客が実際に商品やサービスを購入する段階です。ここでは、スムーズな購入プロセスや、安心して購入できる環境の提供が重要です。オンラインストアの使いやすさや、支払い方法の多様性が影響を与えます。

 

5. 使用(Usage):顧客が商品やサービスを実際に使用する段階です。このフェーズでは、製品の品質や使いやすさが評価されます。サポート体制やマニュアルの充実度も重要な要素です。

 

6. 忠誠(Loyalty):顧客が満足し、リピーターやブランドのファンとなる段階です。ロイヤルティプログラムやカスタマーサポート、アフターサービスなどが効果を発揮します。顧客が長期的にブランドを支持し続けるようにするための戦略が求められます。

 

7. 推薦(Advocacy):顧客が他人にブランドや商品を推薦する段階です。満足度が高い顧客は、口コミやSNSでのシェアを通じてブランドを広めます。このフェーズでは、顧客の声を活かしたマーケティングが重要となります。

 

カスタマージャーニーを理解し、各フェーズで顧客に最適な体験を提供することで、企業は顧客満足度を高め、ロイヤルティを築くことができます。


1.2 カスタマージャーニーマップとは?


カスタマージャーニーマップは、カスタマージャーニーを視覚的に表現したもので、顧客の購買プロセスを詳細に把握し、改善点を見つけるためのツールです。カスタマージャーニーマップを活用することで、企業は顧客体験を総合的に理解し、具体的な改善策を講じることができます。

 

/ カスタマージャーニーマップのサンプル /

カスタマージャーニーマップ:ターゲットのペルソナと各ステージ(認知、興味、検討、購入、使用、忠誠、推薦)が記載されている

※クリックで表が拡大します


1.3 カスタマージャーニーが注目される理由


カスタマージャーニーが注目される背景には、現代のマーケティング環境の変化や顧客行動の複雑化があります。従来のマーケティング手法では、企業側から一方的に情報を発信することが主流でした。しかし、インターネットの普及とデジタル技術の進化により、顧客は多様なチャネルで情報を取得し、比較・検討を行うようになりました。これに伴い、顧客の購買プロセスが複雑化し、多様化しています。

 

1. 顧客視点の重要性:現代では、顧客視点がマーケティングの中心に据えられています。顧客のニーズや期待に応えるためには、顧客がどのような経験をしているのかを理解することが不可欠です。カスタマージャーニーの分析を通じて、企業は顧客がどのフェーズでどのような問題や課題を抱えているかを把握し、それに応じた解決策を提供できます。これにより、顧客満足度を高め、リピーターを増やすことが可能となります。

 

2. デジタル技術の役割:デジタル技術の進化により、顧客の購買行動に関するデータの収集や分析が容易になりました。これにより、カスタマージャーニーの最適化がより効果的に行えるようになっています。企業はデータを活用して、顧客の行動を詳細に把握し、各タッチポイントでの顧客体験を向上させるための戦略を策定できます。例えば、ウェブサイトの訪問履歴や購入履歴、SNSでの活動などから得られるデータを分析し、顧客の興味や関心を深く理解することができます。

 

3. カスタマージャーニーの具体的な利点:

ターゲティングの精度向上:顧客の行動データを分析することで、より精度の高いターゲティングが可能になります。これにより、マーケティングメッセージが適切なタイミングで適切な顧客に届くようになります。

 

カスタマーエクスペリエンスの向上:各タッチポイントでの顧客体験を最適化することで、顧客満足度を高めることができます。例えば、ウェブサイトのユーザビリティ改善や、カスタマーサポートの強化などが挙げられます。

 

効率的なリソース配分:どのマーケティング活動が最も効果的であるかを把握することで、リソースを効率的に配分できます。これにより、ROI(投資対効果)を最大化することができます。

 

顧客ロイヤルティの強化:リピーターを増やすためには、購入後のフォローアップやパーソナライズされたサービスが重要です。カスタマージャーニーを理解することで、顧客が長期にわたってブランドを支持するような戦略を立てることができます。

 

4. 企業の競争力強化 :カスタマージャーニーの理解と活用は、企業の競争力を強化するための重要な要素です。市場が競争激化する中で、顧客のニーズに迅速かつ的確に対応できる企業が優位に立つことができます。顧客体験の質を向上させることで、競合他社との差別化を図り、顧客の支持を得ることができます。

 

 

カスタマージャーニーが注目される理由は、顧客視点を重視し、デジタル技術を活用したデータ分析によって顧客体験を向上させることができる点にあります。これにより、企業は顧客満足度とロイヤルティを高め、ビジネスの成長と成功を実現することができます。



2. カスタマージャーニーの具体的な活用事例


夕日を背景に海辺を走る人のシルエット

2.1 具体的な活用事例:Nike


ナイキは、顧客との関係を強化し、ブランドロイヤルティを高めるために、カスタマージャーニーを最適化するさまざまな取り組みを行っています。以下に、ナイキの具体的な施策とその成果について詳しく紹介します。

 

/ デジタルプラットフォームの活用 /

ナイキは、自社のウェブサイトやアプリを通じて、顧客にパーソナライズされたショッピング体験を提供しています。これにより、顧客は自分に合った商品を簡単に見つけることができ、購買体験が向上します。

 

Nikeアプリ:ナイキのアプリは、ユーザーが商品の検索、購入、フィードバックの提供、さらにはトレーニングプランの利用などを行える総合的なプラットフォームです。アプリでは、ユーザーの過去の購入履歴や閲覧履歴に基づいて、パーソナライズされた商品推薦が行われます。

 

Nike Run Club:このアプリは、ランニング愛好者向けに設計されており、トラッキング機能やトレーニングプラン、コミュニティ機能を提供しています。ユーザーは自分のランニングデータを記録し、他のランナーと交流することができます。

 

 

/ ナイキ+メンバーシッププログラム /

ナイキは、ナイキ+メンバーシッププログラムを通じて、顧客ロイヤルティを強化しています。このプログラムでは、以下のような特典が提供されます。

 

限定商品の提供:メンバー限定の商品やコレクションを提供し、特別感を演出しています。

 

特別イベントへの招待:新商品の発表会やトレーニングセッションなど、メンバー限定のイベントを開催し、ブランドと顧客とのエンゲージメントを深めています。

 

パーソナライズされたオファー:メンバーの購入履歴や行動データに基づいて、個別にカスタマイズされたオファーや割引が提供されます。

 

 

/ インフルエンサーとのコラボレーション /

ナイキは、スポーツ選手やインフルエンサーとのコラボレーションを通じて、ブランドの認知度と魅力を高めています。

 

アスリートスポンサーシップ:ナイキは、トップアスリートとスポンサー契約を結び、そのアスリートがナイキの商品を使用することでブランドの信頼性と魅力を向上させています。例として、マイケル・ジョーダンやセリーナ・ウィリアムズなどが挙げられます。

 

インフルエンサーキャンペーン:ソーシャルメディア上で影響力のあるインフルエンサーと提携し、ナイキの商品を紹介してもらうことで、若い世代を中心にブランドの認知度を向上させています。

 

 

/ カスタマージャーニーの成果 /

ナイキのこれらの取り組みにより、以下のような成果が得られています。

 

顧客エンゲージメントの向上:パーソナライズされた体験や特別な特典により、顧客はブランドに対して強いエンゲージメントを感じています。

 

リピーターの増加:ナイキ+メンバーシッププログラムやアプリの利用を通じて、顧客が再度購入する機会が増えています。

 

売上の拡大:デジタルチャネルの強化により、オンラインでの売上が大幅に増加しています。特に、パンデミック時においては、オンライン販売が売上を支える重要な要素となりました。

 

ブランドロイヤルティの強化:顧客がナイキの商品やサービスに対して高いロイヤルティを持ち、他の人にも推薦することが増えています。

 

 

ナイキのカスタマージャーニーの成功事例は、顧客視点を重視し、デジタル技術を駆使したパーソナライズされた体験の提供、リワードプログラムの運用、インフルエンサーとのコラボレーションといった戦略の成果を示しています。これにより、ナイキは顧客との深い関係を築き、ブランドのロイヤルティと売上の向上に成功しています。



3. カスタマージャーニー:ここを押さえろ!


POINTと書かれた積木とその上で光る電球

3.1 顧客になりきれ!


企業がカスタマージャーニーを実践する上で最も重要なのは、顧客になりきることです。顧客の属性や購買行動を徹底的に調べることで、顧客と同じ視点で考え、振る舞うことができるようになります。このアプローチにより、顧客視点に立ったリアルで具体的なカスタマージャーニーを構築することが可能です。

 

/ 顧客になりきるための具体的な方法 /

詳細なペルソナの作成:詳細なペルソナの作成では、顧客の具体的なプロフィールを作成し、その人物になりきることを目指します。年齢、性別、職業、趣味、価値観、ライフスタイルなどを詳細に設定し、そのペルソナの視点から考える習慣を持ちます。

 

顧客体験のシミュレーション:顧客体験のシミュレーションでは、自分自身が顧客として、実際に商品やサービスを体験します。ウェブサイトの閲覧、購入プロセス、カスタマーサポートの利用などを実際に行い、顧客視点からのフィードバックを得ます。

 

顧客インタビューと観察:顧客インタビューと観察では、顧客と直接対話し、彼らの考えや感じていることを深く理解します。店舗やオンラインでの顧客行動を観察し、どのようなポイントで悩んでいるか、何を重視しているかを把握します。

 

データ分析とインサイトの抽出:データ分析とインサイトの抽出では、購買履歴、ウェブ解析、ソーシャルメディアデータなどを分析し、顧客の行動パターンやトレンドを把握します。定量データと定性データを統合して、顧客の真のニーズや課題を見つけ出します。

 

カスタマージャーニーマップの作成とレビュー:カスタマージャーニーマップの作成とレビューでは、上記の情報を基にカスタマージャーニーマップを作成します。チーム内で共有し、定期的にレビューを行い、顧客視点に基づいた改善点を見つけます。

 

 

顧客の属性や購買行動を徹底的に調べ、自分自身がその顧客になりきるくらい理解することで、よりリアルで効果的なカスタマージャーニーを構築することができます。これにより、顧客満足度を向上させ、ブランドロイヤルティを高め、ビジネスの成功に繋げることができます。

 



4. カスタマージャーニーの実装ステップ


Implementation stepsの文字と5つの木の階段(ステップ)

4.1 実践するための具体的なステップ


実践するための具体的なステップを見ていきましょう。プロジェクトがすでに始まっている方に向けて、詳細な手順を説明します。これから検討を始める方は、このセクションを斜め読みするか、読み飛ばしていただいても構いません。

 

/ 計画フェーズ (Planning Phase) /

1. 目標設定:カスタマージャーニーを実装する目的や目標を明確にします。顧客体験の向上、新規顧客の獲得、顧客ロイヤルティの強化など、具体的な成果を設定します。

 

2. ペルソナの作成:代表的な顧客像(ペルソナ)を作成します。年齢、性別、職業、価値観、ライフスタイルなどの詳細なプロフィールを設定し、ターゲット顧客を具体化します。

 

3. リソースの確保:カスタマージャーニーを実装するために必要なリソース(人材、予算、ツールなど)を確保します。社内の関係部門(マーケティング、セールス、カスタマーサポートなど)と連携を図ります。

 

 

/ 準備フェーズ (Preparation Phase) /

4. データ収集:顧客の購買行動や属性に関するデータを収集します。ウェブ解析ツール、CRMシステム、アンケート調査などを活用して、定量データと定性データを集めます。

 

5. 顧客インタビュー:代表的な顧客に対してインタビューを実施し、彼らのニーズや課題を深く理解します。直接の対話を通じて、顧客の感情や行動の背景を把握します。

 

6. カスタマージャーニーマップの作成:収集したデータを基に、カスタマージャーニーマップを作成します。各フェーズ(認知、興味、検討、購入、使用、忠誠、推薦)ごとに顧客の行動や感情、タッチポイントを詳細に描写します。

 

 

/ 実施フェーズ (Execution Phase) /

7. アクションプランの策定:カスタマージャーニーマップを基に、具体的なアクションプランを策定します。各タッチポイントでの改善策や新たな施策を決定し、実行計画を立てます。

 

8. タッチポイントの最適化:計画に基づき、各タッチポイントでの顧客体験を最適化します。ウェブサイトの改善、カスタマーサポートの強化、パーソナライズドマーケティングの導入などを行います。

 

9. 部門間の協力:関係部門が連携し、計画を実行します。マーケティング、セールス、カスタマーサポートなど、各部門が一丸となって顧客体験の向上に取り組みます。

 

 

/ モニタリングフェーズ (Monitoring Phase) /

10. 成果の測定:計画が実行された後、成果を測定します。KPI(重要業績評価指標)を設定し、顧客満足度、リピーター率、売上高などの指標をモニタリングします。

 

11. フィードバックの収集:顧客からのフィードバックを収集し、実施した施策の効果を評価します。アンケートやレビュー、カスタマーサポートの記録などを活用します。

 

12. 継続的な改善:収集したデータとフィードバックを基に、カスタマージャーニーを継続的に改善します。新たな課題や機会を発見し、対応策を講じることで、顧客体験をさらに向上させます。

 

 

カスタマージャーニーを実装するためのステップは、計画フェーズ、準備フェーズ、実施フェーズ、モニタリングフェーズの4つに分けられます。それぞれのフェーズで具体的なアクションを行うことで、顧客体験を最適化し、ビジネスの成長を促進することができます。



5. カスタマージャーニーのメリットとデメリット


メリットとデメリット

5.1 メリット


カスタマージャーニーには多くのメリットがあります。これらのメリットを理解することで、企業は顧客体験を最適化し、競争力を高めることができます。以下に、カスタマージャーニーの主なメリットを紹介します。

 

/ カスタマージャーニーのメリット /

1. 顧客視点の理解:カスタマージャーニーを作成することで、顧客の視点から購買プロセスを理解することができます。これにより、顧客のニーズや期待に応じたサービスを提供しやすくなります。

 

2. 顧客体験の向上:各フェーズでの顧客の行動や感情を把握することで、タッチポイントごとの体験を最適化できます。これにより、顧客満足度が向上し、リピーターを増やすことができます。

 

3. マーケティング戦略の効果向上:カスタマージャーニーを分析することで、どのマーケティング施策が効果的かを見極めることができます。適切なタイミングで適切なメッセージを送ることが可能になり、マーケティングROI(投資対効果)を最大化できます。

 

4. 部門間の連携強化:カスタマージャーニーは、マーケティング、セールス、カスタマーサポートなど、さまざまな部門が連携して取り組む必要があります。これにより、部門間の連携が強化され、顧客体験の向上に一丸となって取り組むことができます。

 

5. 問題点の特定と改善:顧客が購買プロセスで直面する問題点や障害を明確にすることで、具体的な改善策を講じることができます。これにより、顧客離れを防ぎ、顧客ロイヤルティを向上させることができます。

 

6. パーソナライズドマーケティングの実現:顧客の行動データを活用して、個別にカスタマイズされたマーケティングメッセージを送ることができます。これにより、顧客一人ひとりに合わせた対応が可能になり、エンゲージメントが向上します。

 

7. 新規顧客の獲得:カスタマージャーニーを理解することで、潜在顧客がどのようにしてブランドに触れ、購入に至るかを把握できます。これにより、効果的な新規顧客獲得戦略を立てることができます。

 

8. 顧客ロイヤルティの強化:顧客の満足度を高め、ポジティブな体験を提供することで、顧客ロイヤルティを強化できます。満足した顧客は、再購入する可能性が高く、ブランドの推薦者になることが期待できます。

 

 

カスタマージャーニーのメリットは、顧客視点の理解、顧客体験の向上、マーケティング戦略の効果向上、部門間の連携強化、問題点の特定と改善、パーソナライズドマーケティングの実現、新規顧客の獲得、顧客ロイヤルティの強化など、多岐にわたります。これらのメリットを最大限に活用することで、企業は顧客満足度を高め、持続的な成長を実現することができます。


5.2 デメリット


カスタマージャーニーは顧客体験を向上させるための強力なツールですが、いくつかのデメリットも存在します。以下にカスタマージャーニーのデメリットを詳しく説明します。

 

/ カスタマージャーニーのデメリット /

1. リソースの消費:カスタマージャーニーの作成には、時間と労力が必要です。詳細なデータ収集、顧客インタビュー、ペルソナの作成、マップの作成など、多くのステップが含まれます。特に中小企業にとっては、これらのリソースを割くことが難しい場合があります。

 

2. データの正確性と更新:カスタマージャーニーは、正確なデータに基づいて作成される必要があります。顧客の行動やニーズは時間とともに変化するため、データを定期的に更新することが不可欠です。これを怠ると、過去のデータに基づいた非現実的な戦略になりかねません。

 

3. 複雑さの増大:顧客の購買プロセスは非常に複雑で、多くの変数が影響します。すべての要素を考慮しようとすると、カスタマージャーニーマップが非常に複雑になり、理解や実行が困難になることがあります。

 

4. 部門間の連携の必要性:カスタマージャーニーを効果的に活用するには、マーケティング、セールス、カスタマーサポートなど、さまざまな部門が連携して取り組む必要があります。部門間の連携がうまくいかない場合、顧客体験の向上は難しくなります。

 

5. 定性的データの収集の難しさ:カスタマージャーニーの作成には、定量データだけでなく定性的データも重要です。顧客の感情や意見を正確に把握することは難しく、インタビューや観察を通じて得られる情報は主観的なものが多いため、解釈が困難になることがあります。

 

6. 過度な一般化のリスク:ペルソナやカスタマージャーニーは、典型的な顧客像を基に作成されますが、実際の顧客は多様であり、一つのペルソナやジャーニーがすべての顧客に当てはまるわけではありません。過度に一般化されたモデルに基づいて意思決定を行うと、特定の顧客セグメントを見落とすリスクがあります。

 

 

カスタマージャーニーは、顧客体験の向上に役立つ強力なツールですが、その作成と運用にはいくつかのデメリットも伴います。リソースの消費、データの正確性と更新、複雑さの増大、部門間の連携の必要性、定性的データの収集の難しさ、過度な一般化のリスクなどが考えられます。これらのデメリットを理解し、適切に対応することで、カスタマージャーニーをより効果的に活用することができます。



6. まとめ


青い空と道路

6.1 カスタマージャーニーの今後の役割


カスタマージャーニーを活用したマーケティング手法は、顧客の購買プロセスを理解し、顧客の悩みや課題に合わせた提案を行うことができます。また、カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の購買行動やその課題を可視化し、効果的なマーケティング施策を実行することに役立ちます。

 

また、カスタマージャーニーは、データ分析やモデリング、またAIの活用やオムニチャネルの拡大などによって、さらに注目を集めることになるでしょう。これらの発展を取り入れ、顧客の悩みや課題に柔軟に対応することで、企業の成長に大きく貢献することができるようになります。

 

・・・カスタマージャーニーマップはあくまでもツールです。これを作ることが目的にならないように、注意しましょう (^^)/