宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー
SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。
今日の論点
どうすれば上手く伝えることが出来るのか?
顧客が必要とするタイミングで、タイムリーに情報を届けると顧客満足度が高まります。タイミングを間違えると、逆に不信感を持たれてしまいます。まぁ、契約する直前に商品カタログを持ってこられても、使いみちがないということです。
今回はこの情報を提供する精度を向上させるために、「クロスメディア」をご紹介します。
目次
1.1 クロスメディアとはなにか
1.2 クロスメディアを実施する5つのステップ
2. クロスメディアを実施する3つのメリット
2.1 セールスに必要な時間を短縮することができる
2.2 提案の精度を向上させることができる
2.3 顧客満足度が高まる
3. まとめ
3.1 次のステップへ進むための方法を考えろ
1. クロスメディアを実施する方法
1.1 クロスメディアとはなにか
「クロスメディア」とは、商品やサービスを提案する際に、複数のメディアを使用して情報を提供し、契約に至るまでの手法のことです。
顧客が商品やサービスを認知して、契約に至るまでのプロセスには、さまざまな顧客接点があり、その顧客接点ごとに必要とする情報が異なります。
仮に顧客が、まだ商品やサービスをよく知らない段階だとすると、このタイミングで必要なものは商品情報です。適切な顧客接点を経由して、カタログやチラシなどを提供する必要があります。しかし、このタイミングで、契約後のアフターサポートの情報は必要ありません。各ステップごとに必要な情報は異なるのです。
「必要な情報」を「必要なタイミングで提供」するためのメディア活用手法が、クロスメディアなのです。
1.1 クロスメディアを実施する5つのステップ
クロスメディアを実施するにあたって、カスタマジャーニーマップを作成する必要があります。これは顧客が商品やサービスを認知して、購入に至るまでのプロセスを図にしたものです。
セールスステージ毎にどのような顧客接点があるのか、またその顧客接点ではどのような情報を提供する必要があるのか、それらをビジュアル化する必要があります。
カスタマージャーニーマップを作成し、クロスメディアを実施するためには、下記の5つのステップが必要です。
1.ペルソナを設定する
自社の顧客を具体的なひとりの人物像まで落とし込んだものを「ペルソナ」と呼びます。まずはじめに、これを準備しましょう。カスタマジャーニーマップに、リアリティを持たせるために必要な作業です。作成方法については、ブログ記事「ペルソナで顧客の課題を絞り込め」をご参照ください。
2.購買に至るまでのステップを決める
前段で準備した「ペルソナ」を使います。このペルソナが、どの様なプロセスを経て購入に至るのか、そのプロセスを検討します。上記の図では「認知→情報収集→検討→購入→再購入」としていますが、これにこだわる必要はありません。自社のプロセスに合ったものを設定してください。
3.顧客接点をマッピングする
顧客接点とは、顧客が企業と接するポイントのことです。この顧客接点を全て洗い出し、カスタマジャーニーマップにマッピングします。これにより、どのステップで、どのような顧客接点があるのかを把握することができます。顧客接点の詳細については、ブログ記事「競合他社への乗り換えを防止する方法」をご参照ください。
4.顧客接点ごとに必要な情報を洗い出す
顧客接点ごとに必要とする情報は異なります。情報収集のステップで契約書の雛形を渡されても困るでしょうし、契約後に商品カタログを渡されても使いみちに困ります。顧客接点ごとに、どのような情報が必要なのかを洗い出してください。
5.適切なクリエイティブを用意する
顧客接点ごとに提供するべき情報が決まれば、それに基づいてクリエイティブを制作する必要があります。カタログ、提案書、Webサイトなど、その顧客接点に応じたものを用意してください。
以上の5つのステップで、クロスメディアを実施することが出来ます。しかしこれで終わりではありません。このプロセスで問題がないのかを、常にチェックを続ける必要があるのです。
2. クロスメディアを実施する3つのメリット
2.1 セールスに必要な時間を短縮することができる
必要な情報を必要なタイミングで提供することができれば、顧客が意思決定に要する工数を、大幅に削減することが出来ます。これによって、購入や契約に至るまでの時間を短縮することができます。
また、無駄な情報のやり取りがなくなりますので、一人の顧客にかける時間も短縮・削減することが出来ます。
2.2 提案の精度を向上させることができる
顧客接点で必要な情報を提供しても、なかなか次のステップに移行してもらえないことがあります。これは、いま提供している情報だけでは、顧客は意思決定することが出来ず、判断を保留しているということです。
逆に言うと、意思決定を下すことができる情報を提供すれば、次のステップへ進めるということですので、提供する情報を見直す必要があります。このプロセスを繰り返していけば、時間とともに提案の精度を向上させていくことが出来ます。
2.3 顧客満足度が高まる
顧客からすれば、常に必要な情報が手元に届くという状態が続くため、意思決定にストレスがかかりません。特に購入や契約に不安を感じるようなタイミングで、それを払拭するような情報をタイムリーに提供すれば、顧客からの信頼度が高まります。
このようにストレスなく、購入や契約まで至ることができれば、顧客満足度は高まり、企業に対するロイヤリティーも向上します。
3. まとめ
3.1 次のステップへ進むための方法を考えろ
クロスメディアを実施するのも、そのためにカスタマジャーニーマップを作成するのも、全て契約を受注するためです。
セールスステージを確実に前に進めてクロージングするためには、なにが必要なのか。また次のステージに進めないのには、なにが障害になっているのか。これらを考え続ける必要があります。
改善できる部分は少しずつかもしれませんが、その精度は確実に上がってきますので、継続することが大切です。