
宮崎 祥一 | Shoichi Miyazaki
Honeywell、Experian、Teradata、Avanade、SAS Institute などの国際企業において、ビジネス開発を担当。
現在、株式会社アルファブランディング 代表。

今日の論点
その導入事例、顧客に刺さっていますか?
「この導入事例、よくできているんだけど、なんか刺さらない」・・・営業活動の現場で、そんな声を耳にしたことはないでしょうか。せっかく丁寧にまとめられた導入事例も、読み手に響かなければ、その価値は半減してしまいます。
実際のところ、「刺さる導入事例」と「刺さらない導入事例」には、明確な違いがあります。その差を生み出しているのは、情報の質でもデザインでもありません。「どれだけ“自分ごと”として読めるかどうか」、ただそれだけです。
本記事では、なぜ導入事例が刺さらないのか、どうすれば刺さる事例を届けられるのか、そして営業の武器として最大限に活かすための考え方について掘り下げていきます。
導入事例を、ただの「参考情報」ではなく、「決裁を動かすストーリー」に変えるヒントを、ぜひ掴んでいただければと思います。
まぁ、最終的には「ケースシナリオ™、エエでぇ。」という、いつものオチなのですが・・・(^^)/
目次
1-1. 刺さらない導入事例の落とし穴
2. 刺さらない導入事例の構造
2-1. 「全体の印象」が評価を左右する
2-2. 必要な要素だけを提示する戦略
3. 決裁者が見ているもの
3-1. 部長と役員で異なる評価軸
3-2. 評価と出世の構造
3-3. 社長の立場と株主対応
3-4. 複数役員による意思決定
4. 解決策:導入事例を「自分ごと化」するには
4-1. ストーリーで伝える
4-2. 共感を得る構成
4-3. ケースシナリオ™の活用
5. ケースシナリオ™という選択
5-1. 決裁者の共感を引き出す提案ツール
6. まとめ
6-1. 提案が“自分ごと”になる仕掛けが、意思決定を動かす
1. 課題と背景
1-1. 刺さらない導入事例の落とし穴
導入事例は、本来、製品やサービスの価値をわかりやすく伝えるための強力なツールです。実際、営業現場でも「この事例を見て前向きになった」といった声が聞かれることも少なくありません。
ところが逆に、「この事例、よくできてはいるんだけど、なんか違うんだよね」と感じさせてしまうケースも存在します。そして、一度そう判断されてしまうと、その後の情報までもが刺さらなくなり、商談の流れを断ち切ってしまう可能性すらあるのです。
導入事例が刺さらない最大の要因は、“自分ごと化”できないことにあります。読んでいても、どこか他人事のように感じてしまう。自社の業種や規模、抱えている課題と微妙にズレている。そのズレが、最初は小さな違和感だったとしても、やがて「これはうちには関係ない情報だ」という判断に直結してしまいます。
重要なのは、最初の数秒で「これは自分たちに関係のある話だ」と思わせられるかどうか。そこを外すと、その後の丁寧な説明や豊富な実績も、読み手の心には届きません。
なぜそうした印象のズレが生まれるのか。どんな構造的な要素が“刺さらなさ”を生み出しているのか。それを次章で詳しく見ていきます。
2. 刺さらない導入事例の構造
2-1. 「全体の印象」が評価を左右する
導入事例が「自分ごと化」されるかどうかは、細部の情報だけでなく、全体から受ける印象によって大きく左右されます。特にBtoBの提案では、相手企業の立場や状況に“どれだけ合っているか”という印象が、事例の評価を決定づけます。
たとえば、ある導入事例で20の機能や施策が紹介されていたとします。読み手にとって本当に必要なのは、そのうちの5つだけだったとしたらどうでしょうか?
残りの15が自社には関係のないものだと認識された瞬間、「この事例はうちには合わないな」という印象が強く残ってしまいます。つまり、25%しか当てはまっていないという見え方になってしまうのです。
これは非常にもったいないことです。実際には5つの機能がピタリとニーズに合っていても、全体の75%が不要と見なされることで、「合っている情報の価値」まで相対的に下がってしまうのです。
導入事例においては、“正確さ”よりも“印象”の方が判断に与える影響が大きい場面が多々あります。情報量が多いことが必ずしも説得力につながるとは限りません。むしろ、不必要な情報が多すぎると、「自社とは違う世界の話だ」と思われてしまうリスクが高まります。
営業資料の文脈でも同様ですが、「たくさんの機能があります」という見せ方は、“誰にでも合いそう”である一方、“誰にも刺さらない”という結果にもつながりかねません。相手の課題や立場にフィットしない情報が並んでいると、それだけで提案全体の説得力が損なわれてしまうのです。
だからこそ、導入事例では「どれだけ網羅しているか」ではなく、「どれだけ相手の立場に寄り添っているか」を重視する必要があります。必要な情報に絞り込み、読み手が「これは自分たちのための事例だ」と思える構成こそが、刺さる事例の第一歩なのです。
2-2. 必要な要素だけを提示する戦略
導入事例を営業資料として活用する際、「あれもこれも伝えたい」と思うのは自然なことです。製品やサービスには多くの魅力があり、それらを余すことなく紹介したくなるのは当然です。しかし、情報の出しすぎは時に逆効果となり、相手の判断を鈍らせてしまいます。
ポイントは、「全部伝える」のではなく、「相手にとって必要なことだけを伝える」ことです。たとえば、20の機能を持つ製品があったとしても、相手にとって本当に意味があるのは5つかもしれません。そこで20すべてを提示すれば、前章で述べたように「合わない情報」の印象が強く残り、提案全体がマイナスに評価されてしまう可能性があります。
一方、最初から5つの機能に絞って提示し、そのうちの3つや4つが相手の課題に合致していれば、「これはうちにフィットしている」という印象を与えることができます。仮に1つが不要だったとしても、「おおむね合っている」「多少ズレはあっても活用できそうだ」とポジティブに受け取られるのです。
導入事例を提案の一部と捉えるのではなく、商談そのものと同様に「相手ごとに構成を最適化する」という視点が求められます。情報を削ることに抵抗がある場合もあるかもしれませんが、必要な要素に絞り込むことで、提案の精度はむしろ高まり、相手にとっての“自分ごと感”も増していきます。
読み手の注意は限られており、導入事例にじっくり目を通してもらえる時間も限られています。その中で必要な印象を残すためには、「何を伝えるか」と同じくらい「何を伝えないか」が重要です。
情報を削るのは、手を抜くことではなく、戦略的に磨き込むということ。導入事例においても、これは非常に有効なアプローチなのです。
3. 決裁者が見ているもの
3-1. 部長と役員で異なる評価軸
営業活動において、相手が「誰に提案しているのか」を意識することは基本中の基本です。しかし、いざ提案や解決策を提示する段階になると、この視点が曖昧になってしまうことがあります。特に見落とされがちなのが、部長と役員とでは、提案に対して評価する視点そのものが大きく異なるという点です。
部長クラスの決裁であれば、主な関心事は「自部門の業務がどれだけ改善されるか」にあります。つまり、業務効率化や作業負担の軽減、生産性の向上といった“現場の成果”が重視されます。提案内容もその観点で語られていれば、十分に説得力を持ちます。
ところが、提案の金額が大きくなり、役員決裁が必要なレベルになると、話はまったく変わってきます。役員が求めているのは「経営課題の解決」や「経営計画への貢献」であり、単なる業務改善ではインパクトが弱すぎるのです。
たとえば、同じ“業務効率化”をテーマとした提案でも、部長にとっては「作業時間が短縮された」という話が魅力的に映るかもしれません。しかし役員にとっては、それが「組織全体のリソース最適化」や「コスト構造の見直し」など、経営上のメリットとどうつながっているかが問われます。
つまり、提案の受け手が誰であるかによって、語るべき内容や強調すべきポイントは大きく変わるのです。そして、意思決定に役員が関与するケースが増えている今、“現場の改善”にとどまらない視点の転換が強く求められています。
提案資料や導入事例を作成・活用する際には、「この内容は誰に向けたものか」「誰の視点で語られているか」を意識することが欠かせません。相手が役職者であればあるほど、“業務”の視点から“経営”の視点へと軸を引き上げることが必要になるのです。
3-2. 評価と出世の構造
役員は経営目線で判断する・・・それは間違いありませんが、実際に提案を通す際の判断には、もう少し“人間的な構造”が深く関わっています。それが、評価と出世の構造です。
企業における昇進は、ほとんどの場合「上司からの評価」によって決まります。営業職であれば売上実績などの数字が評価基準になりますが、それだけでは不十分で、結局のところ最も大きな影響を与えるのは「上司からの印象」や「信頼されているかどうか」です。
つまり、役員まで昇進した人たちは、各ステップで自分の“上司”にうまく取り入ってきた人物だと言い換えることができます。そして、今その役員にとっての“上司”とは誰かといえば、それは社長です。
この構造を理解すると、役員の判断軸がより立体的に見えてきます。役員は個人の信念や実務経験だけで判断しているわけではありません。むしろ重要なのは、社長が打ち出した経営計画にいかに貢献できるか、そしてその貢献が社長からどう評価されるかなのです。
社長に信頼されることが、役員にとっての“生存戦略”であり、そのためには「経営計画に沿った判断」が何よりも重視されます。
このように、役員の意思決定には「合理性」だけでなく、「上司(=社長)への配慮」が密接に絡んでいます。提案が経営計画の実現に資する内容であれば、役員は「この提案を通すことが、自分の評価につながる」と考えやすくなるのです。
導入事例や提案資料を構成する際は、こうした評価構造を意識することで、「役員にとって通したくなる提案」に変わっていきます。単に課題を解決するだけでなく、「これは経営課題にも貢献する提案だ」と思わせることが、決裁の突破口となるのです。
3-3. 社長の立場と株主対応
役員が社長の意向を重視する背景には、社長自身が抱える“上位の評価構造”が存在します。つまり、社長もまた誰かに評価されている存在であり、その最上位に位置するのが株主です。
上場企業であれ、未上場のオーナー企業であれ、経営トップである社長は、株主や取締役会、あるいは親会社といった“外部ステークホルダー”に対して、経営の結果責任を負っています。その責任を果たす手段のひとつが「経営計画の達成状況を説明すること」です。
株主にとって、最も関心があるのは「経営資源がどのように活用され、将来どのようなリターンが見込まれるのか」です。これに対して社長は、年度ごとに策定した経営計画をもとに、「我々は計画通りに進んでいる」「このような成果が出ている」といった説明を行う必要があります。したがって、社長にとって最も重要なのは、“自分が打ち出した経営計画を着実に実行に移すこと”に他なりません。
この構造の中で、役員が何を重視するかが見えてきます。役員は社長から評価される立場にあり、社長は株主に対して成果を説明しなければならない。つまり、役員にとって「経営計画への貢献」は、単なる業務の成果を超えた、組織的な“評価ポイント”として機能しているのです。
このような評価の連鎖を理解すると、導入事例や提案資料において、単なる業務改善や機能訴求だけでは不十分である理由が明確になります。重要なのは、「この提案は経営計画のどの部分と整合しているのか」「社長が語る目標を、どう具体化するか」というメッセージが含まれているかどうかです。
社長の説明責任が存在する限り、その直下にいる役員たちは、「この投資は、経営計画を前に進めるものだ」と確信できる材料を求めます。そうでなければ、高額な意思決定に踏み切ることができません。
導入事例や営業提案は、単なる業務改善の枠を超えて、「経営の進捗に資するかどうか」という観点で再設計される必要があるのです。
3-4. 複数役員による意思決定
近年、多くの企業で意思決定のプロセスが変化しています。かつては、1人の役員がある程度の裁量を持って予算を承認できるケースもありましたが、現在では複数の役員が合議制で意思決定を行うケースが一般的になりつつあります。その背景には、ガバナンスやコンプライアンスへの意識の高まりがあります。
特に数千万円単位のIT投資や、新規サービスの導入など、経営に与える影響が大きい意思決定については、「一人の判断で決める」こと自体がリスクと見なされます。そのため、社長を含めた経営会議や役員会で、提案内容に対して“共通の納得感”が形成されていることが、承認の前提条件となってきているのです。
ここで問題になるのが、「誰にでも理解できる提案になっているか」という点です。複数の役員が関与する場合、それぞれのバックグラウンドや専門分野は異なります。たとえば、システムに詳しい取締役と、財務に強い専務では、同じ提案を見ても着目するポイントがまったく異なるでしょう。
こうした状況で、ある特定の人にしか通じない内容や、専門性に依存した提案では、合意形成を得ることが難しくなります。
重要なのは、誰が読んでも納得できるストーリーとして、提案や導入事例が構成されていることです。
ストーリーの力は、専門知識の差を超えて「意味」を共有することを可能にします。抽象度の高い経営方針と、現場レベルの業務課題の橋渡しをするのがストーリーであり、それによって「なるほど、これは必要だ」と複数の役員が同じ方向を見ることができるのです。
このような状況を踏まえると、導入事例や営業資料は、「誰か一人に刺さる」だけでなく、「複数の決裁者が一緒にうなずける構成」であることが求められます。合議制時代の意思決定には、“個人に響く提案”から“組織に合意される提案”への転換が必要なのです。
4. 解決策:導入事例を「自分ごと化」するには
4-1. ストーリーで伝える
複数の役員が関与する意思決定においては、「論理的に正しい提案」や「機能的に優れた製品」であっても、必ずしも通るとは限りません。それは、提案内容が“理解されない”のではなく、“納得されない”からです。そして、その納得を引き出すうえで、非常に有効なのが「ストーリー」です。
ストーリーには、前提・課題・取り組み・結果という一連の流れがあります。この流れに沿って提案を構成することで、読み手は自社の状況や業務に置き換えながら内容を理解することができます。専門用語や細かな機能説明に頼らなくても、「なぜそれが必要なのか」「どんな変化が起きるのか」が、自然と頭に入ってくるのです。
特に、ITやDXなどの提案においては、技術的な詳細が複雑になりやすく、専門外の役員にとっては「理解が難しい」「判断がつかない」と感じられることもあります。その結果、提案全体に対して慎重な姿勢を取られ、意思決定が遅れたり、見送られたりする可能性も出てきます。
そこで重要になるのが、「ストーリーとしての構造」です。背景にはどんな業界特有の事情があり、企業はどんな課題に直面し、それにどう対処し、どのような成果につながったのか。こうした時系列の流れが整理されていることで、非専門家でも自然に内容を理解しやすくなります。
また、ストーリーの最大の利点は、「断片的な情報」を「一貫した流れ」に変える力です。単なる機能紹介や個別効果の羅列ではなく、課題から成果までを一本の線でつなぐことで、意思決定者の視点から見て“納得できる全体像”が立ち上がります。
導入事例や提案内容が複雑であればあるほど、構造化されたストーリーによって「伝わるかどうか」が決まってきます。だからこそ、ストーリーで伝えるというアプローチは、複数の決裁者に向けた提案において、非常に強力な武器となるのです。
4-2. 共感を得る構成
提案を“理解される”ことと、“共感される”ことは、似て非なるものです。理解は論理によって得られますが、共感は「これは自分たちの課題に近い」「うちの状況でも起こりそうだ」という、感覚的なフィット感によって生まれます。そして、この共感こそが、導入事例や提案を“自分ごと”として受け止めてもらうための鍵になります。
そのためには、提案や導入事例の構成を、読み手の視点に寄せて設計することが重要です。多くの営業資料では、自社製品やサービスの強みから入ってしまいがちですが、そうした構成では「それがなぜ必要なのか」が見えづらく、読み手の共感を得にくくなります。
共感を得る構成には、いくつかのポイントがあります。
まず第一に、「なぜこの話をしているのか」という背景が明確であることです。業界動向や市場変化など、読み手がすでに感じている不安や課題意識とリンクする導入部があるだけで、「これは自分たちにも関係ある話だ」と感じてもらいやすくなります。
次に、課題を抽象化しすぎず、読み手の業種・業務に即した具体性を持たせることです。たとえば「業務効率化」ではなく、「多店舗展開による在庫管理の煩雑化」や「請求処理の属人化」といった形で表現することで、自社の現場と重ね合わせやすくなります。
さらに重要なのが、「共通する立場や悩み」の提示です。企業規模、業種、拠点数、組織体制など、似たような前提条件が示されていれば、「これは自社と近い」と感じてもらえる確率が高まります。これは、相手の不安や疑問に対して、あらかじめ“地ならし”をしておくような効果を持ちます。
共感は、後から補足することが難しい要素です。だからこそ、導入事例や提案資料の構成は、最初から「読み手に自分の話だと思ってもらえるかどうか」を軸に設計する必要があります。汎用的な構成では届かない層にも、“これはうちの話かもしれない”という入り口を用意することで、はじめて商談が動き出します。
4-3. ケースシナリオ™の活用
導入事例や提案資料において、“共感される構成”や“ストーリーとしての説得力”が重要であることは、これまで述べてきた通りです。とはいえ、実際の営業現場では「自社と同じような事例がまだない」「個別の提案資料を毎回作るのは手間がかかる」といった声も多く、理想的な提案づくりが難しい場面も少なくありません。
そこで活用いただきたいのが、ケースシナリオ™です。
ケースシナリオ™は、実際の導入事例が存在しない段階でも、特定の業種や業務課題に合わせて構成された“ストーリー型の営業資料”です。単なる製品紹介や成功事例の焼き直しではなく、あらかじめ対象業界の特徴、業務プロセス、よくある課題、改善の流れを整理したうえで、「導入前〜導入後に何が起こるのか」を疑似的に体験できるよう設計されています。
その特長は、大きく3つあります。
1つ目は、業種や企業規模に最適化されたシナリオであることです。ターゲット企業と同じ立場の企業をモデルとして設定しており、「これはうちと近い」「この課題、まさにある」と感じてもらえるよう構成されています。
2つ目は、業務視点と経営視点の両方を含んでいることです。業務レベルの改善だけでなく、経営計画との接点や組織的な意義も丁寧に描写することで、部長レベルから役員レベルまで、読み手の立場に応じた“自分ごと化”を促します。
3つ目は、汎用性と特化性のバランスにあります。完全なオーダーメイドではないため運用コストを抑えつつ、ある程度の業種・業務別パターンに最適化されているため、現場でも「提案のネタ」としてすぐに活用することができます。
ケースシナリオ™は、導入実績がまだ乏しいフェーズや、新しい市場にアプローチする際にも力を発揮します。営業担当者が「どう話を切り出せばいいか」「どう興味を持ってもらうか」に迷ったときに、自信を持って最初の一歩を踏み出せる材料になるのです。
共感されるストーリーを、最初から用意しておくこと。それが、提案の通過率を大きく左右する時代において、営業活動を支える確かな武器になります。
5. ケースシナリオ™という選択
5-1. 決裁者の共感を引き出す提案ツール
営業現場では、提案が「通るか、通らないか」を分けるのは、論理やスペックの優劣ではありません。特に役員クラスが関与するような高額案件では、どれだけ共感を得られるかが意思決定を大きく左右します。
役員たちは日々、無数の提案に触れています。その中で「これは自社にとって本当に意味がある」と感じてもらえるかどうかは、提案の構成、視点、ストーリーの持たせ方にかかっています。その点で、ケースシナリオ™は、決裁者の共感を引き出すために設計された、非常に実践的なツールです。
ケースシナリオ™の最大の特長は、「これは自分たちの話だ」と思わせる構成にあります。業種・業務・課題の設定が明確で、企業規模や組織構造までも近しい想定で描かれているため、読み手が自然に自社の状況と重ね合わせながら読むことができるのです。
また、業務部門だけでなく、役員層の視点にも対応している点も重要です。現場の課題だけでなく、それがどのように部門全体、ひいては企業の経営計画と結びついているかを明示することで、「これは自部門の改善だけでなく、会社として進めるべきことだ」と納得させることができます。
さらに、複数の役員による合議が求められるケースでも効果を発揮します。ストーリーとして一貫性があり、技術系・業務系・経営系、いずれの立場から見ても理解しやすい構造になっているため、共通の“納得の土台”をつくる材料として活用できるのです。
営業担当者にとっても、ケースシナリオ™は大きな支えとなります。「自分の言葉で提案内容を説明できる」安心感があり、また、提案の方向性を社内で共有する際にも、関係者間の認識を揃えるツールとして有効です。
決裁者の共感を引き出すためには、情報の正確さだけでなく、「読み手の立場に合わせて物語を描く力」が必要です。ケースシナリオ™は、その“物語”をあらかじめ戦略的に設計し、営業活動における意思決定を後押しする役割を果たします。
6. まとめ
6-1. 提案が“自分ごと”になる仕掛けが、意思決定を動かす
導入事例や営業提案は、単なる情報提供の手段ではありません。それが「刺さる」かどうかは、相手にとって“自分ごと”として受け取れるかどうかで決まります。
多くの企業が導入事例を営業資料として活用していますが、業種や規模、課題の違いに配慮されていない汎用的な事例では、むしろ逆効果になってしまうことすらあります。理解はされても共感されず、「うちには合わない」という印象だけが残ってしまうのです。
一方で、ターゲット企業の視点に立ち、業界特性や業務の構造、意思決定プロセスをふまえて構成されたストーリーは、読み手の共感を呼び、「これは自分たちのための提案だ」と思わせることができます。とりわけ、部長と役員の視点の違いや、合議制による意思決定、経営計画との整合性といった背景を踏まえた提案は、決裁を通すうえで大きな力を発揮します。
ケースシナリオ™は、そうした「自分ごと化された提案」を事前に設計し、営業現場で再現性高く活用するためのツールです。まだ導入事例が存在しない段階でも、実際の課題と解決の流れをリアルに描き出し、提案の説得力を引き上げることができます。
共感される提案が、意思決定を動かす。その第一歩として、ケースシナリオ™を活用してみてはいかがでしょうか。
📝 ケースシナリオ™がなくても、経営計画に沿った導入事例があれば、役員の合意は得られます。ただし、現場の課題にも同時に応える必要があることを忘れてはなりません。
多くの提案が刺さらないのは、顧客の業務課題がきちんと反映されていないからです。その原因の一つが、コールメモが残されていないことにあります。記録があれば、聞き取った課題を整理し、提案に生かすことができますが、記憶頼りでは共感を得る提案にはなりません。
アニュアルレポートも読まず、コールメモも残していないのであれば、提案が刺さらないのも無理はありません。
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