学習塾の集客は講師の熱量で決まる - 学習塾の集客における講師の熱量の重要性

ガッツポーズをする笑顔の男性の画像。ラップトップの前で立ち上がっている。その画像の上に「学習塾の集客は講師の熱量で決まる - 学習塾の集客における講師の熱量の重要性」と書かれている。

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。

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今日の論点


学習塾の販促とブランディング

学習塾の先生は、学校の先生と違って生活指導をする必要がないので、気楽にに思われるかもしれませんが、学習指導についてはシビアにみられますので、なかなか大変な仕事です。

 

少子化対策が国の重要課題として取り上げられている中、今回は学習塾の生き残り戦略、特に販促とブランディングについて考えたいと思います。

 

(会社からの帰り道、明るい看板がいくつか目に付きます。たいていはコンビニか学習塾ですね。)



目次


1. 学習塾業界の実態調査


ペンを持って考える女子高生

1.1 学習塾の市場概況


下記は東京国税局が発表している、平成28年度における「教育・学習支援業」に従事するものの所得税申告です。東京国税局の管轄内だけのデータですので、全国平均ではありませんが、おおよその傾向を掴む分には十分だと判断しました。

 

所得階層 人員数 比率A(%) 比率B(%)
2億円以下 11 0.1
1億円以下 24 0.3
5000万円以下 43 0.5
3000万円以下 57 0.7

2000万円以下

63 0.8
1500万円以下 59 0.7
1200万円以下 67 0.8
1000万円以下 130 1.6 8.4
800万円以下 111 1.4
700万円以下 177 2.2

600万円以下

265 3.2
500万円以下 463 5.7 87.7
400万円以下 764 9.3
300万円以下 608 7.4
250万円以下 840 10.3

200万円以下

1,086 13.3
150万円以下 1,485 18.2
100万円以下 1,047 12.8
70万円以下 878 10.7

 

年間所得 500万円以下の比率が「87.7%」と、かなり厳しい業界だと解ります。事業として学習塾を営む場合、教育施設費や人件費など固定費が占める比率が高く、全体として儲かり難い業界構造になっています。またこれ東京国税局の統計データですので、地方の場合はさらに厳しい状況であると推察されます。

 

ただ、矢野経済研究所の調べ(※)によると、2016年度の学習塾・予備校の市場規模は、前年度比0.5%増の9,620億円と、微弱ながら増加傾向にあります。

 

少子化によって生徒が減少しているのですが、難関校への進学希望者は増加傾向にあり、受験対策に力を入れている学習塾は規模を拡大しています。

 

特徴を持った学習塾は成長傾向にありますが、その分、従来スタイルの塾を淘汰しているのが現在の状況と言えます。

 

※出展:「教育産業市場に関する市場調査を実施(2017年)」株式会社矢野経済研究所



2. 学習塾の形態と将来展望


重ねた書籍とステップアップで合格をすることを表した模式図

2.1 学習塾の3つの形態


学習塾の分類する方法は、いくつかありますが、ここでは、集団授業型、個別指導型、eラーニングの3つに分けて解説します。

2.1.1 集団授業型

学校と同じように、講師一人が多くの生徒を教えるタイプを集団授業型と呼びます。昔からある学習塾のスタイルです。ただ学校と異なるのは、学力別にクラス編成がなされており、それぞれの生徒のレベルに合った授業を受けることが出来ます。

 

ただ、学力別にクラス分けされているとはいえ、既に理解していることを、重複して学習することも少なくないため、学習効率が下がってしまうことが懸念されます。

2.1.2 個別指導型

最近、急速に規模を拡大しているのが、この個別指導型の学習塾です。生徒それぞれに対して、個別の学習計画を立てて、理解度の低い部分に対して重点的に時間をかけます。

 

ただ、生徒1〜3人を一人の講師が担当するため、多くの講師を必要とします。それに伴い、受講にかかる費用も高額となる傾向にあります。

2.1.3 eラーニング型

インターネットの普及により、時間と距離の制約が大幅に取り払われました。授業の動画をインターネットで配信すれば、いつでも、どこでも授業を受けることが出来ます。

 

有名な講師が一度動画を撮影すれば、質の高い授業を全国の生徒が受講することが出来るようになります。また受講する人数の増加によって、生徒一人あたりの受講料を抑えることにも繋がります。


2.2 学習塾の未来予想図


難関校を目指した学習塾については、今後も拡大していくものと思われます。また、業態についてもインターネットの後押しを受けて、次の3つに集約していくものと考えています。

2.2.1 コンテンツ提供型

従来の集団授業型で提供していた学習コンテンツが、オンライン化していくことは、ほぼ間違いありません。

 

実際に通信教育事業者などが、有名講師を使った動画コンテンツの配信や、それに連動したテキストの販売などを開始しています。今後、これらのコンテンツを制作する会社が、業績を伸ばしていくでしょう。

 

あと、ユーザーの年齢が明確にわかるため、企業がOne to Oneマーケティングを行うには最適です。動画の冒頭に企業のCMをながしたり、映像の上下に企業や商品のロゴを出せば、受講費を無料化することも可能です。

 2.2.2 プランニング提供型

受験の試験問題は各学校毎に、傾向が異なることが知られています。同じ英語の問題であっても、学校側がビジネスマンを養成したと考えているのであれば、長文読解やヒアリングの能力が重視されるでしょうし、弁護士を養成したいのであれ、難解な英文を読み解く文法力などに、重きが置かれるでしょう。

 

これら学校の出題傾向と現在の成績とのギャップを分析して、どの学習コンテンツをいつまでに終了させるべきなのか、受験までの道のりをプランニングするサービスが台頭してきます。既に一部の大手学習塾では、AIなどを活用したサービスも提供され始めていいます。

2.2.3 個別指導型

コンテンツが十分揃っていても、自力では解けない問題が必ず出てきます。それを一つずつ潰していく、マンツーマンのサービスが求められることになります。

 

また、解けない問題を懇切丁寧に教えることはもちろんのこと、学習に対する意欲を高めるような、メンタルトレーナー的な役割も担う必要が出てきます。従来の学習塾は、この個別指導型にポジションを移すことになります。



3. 講師が持つ「熱量」を伝えろ


黄色いメガホンを持つ女子高生

3.1 評価は合格実績から学習指導へ


学習コンテンツの制作や、受験対策のプランニングは、大手企業が最新のテクノロジーを駆使しながら、サービスを展開していくでしょう。従って集団授業型の学習塾は、個別指導型へ業態を移行せざるを得ません。

 

またそれに伴い、個別指導型の学習塾の評価基準にも変化が生まれます。これまでは、難関校に何人合格させたという実績が、学習塾を評価する上での大切な指標でしたが、それらの指標の大部分は、コンテンツ提供型やプランニング提供型が引き取ってくれます。

 

個別指導型に求められる役割が、懇切丁寧な個別指導と、生徒の学習意欲のマネジメント、この2つに移行していくため、講師の評価も合格実績から学習指導に移行していくものと予想されます。


3.2 学習塾は講師の「熱量」を伝えろ


ここで個別指導型の学習塾を誰かに紹介する、いわゆる口コミによる集客を考えてみたいと思います。

 

仮にあなたの子供が学習塾に通いはじめて、ここ数ヶ月で大きく成績を伸ばしたとします。自分の子供の成績が良くなったのでこの学習塾はオススメですと、友だちに伝えるでしょうか。

 

有益な情報なので伝えたい気持ちはありますが、「あの塾に通いはじめて、成績が上がったのよ。」とは言いにくいものです。自慢話のように聞こえてしまうのは嫌なので、自ら積極的に話すことはありません。従って学習効果についての口コミは、あまり広がらない傾向にあります。

 

一方、これからの個別指導型の学習塾が、講師の「熱量」で評価されるとするならどうでしょう。解けない問題があると懇切丁寧に教えてくれたり、メールやSNSで学習の状況を報告してくれたりする場合です。「子供が通っている塾の先生、とっても熱心なのよ。」このフレーズであれば、友だちに伝えることが出来ます。

 

販促ツールとして制作するチラシやDMなども、この「熱量」を上手く伝える内容にする必要があります。ただカリキュラムを列挙しても販売促進には繋がりません。

 

この「熱量」を販売促進の中心に据えて、口コミで生徒を増やす努力をすることが、個別指導型の学習塾が生き残っていくための、大切なポイントなのです。


3.3 熱量を伝えるにはメッセージが大切


 これは架空の学習塾のコマーシャルメッセージです。違いを読み比べてみてください。

 

<メッセージA>

  • 学習塾 ◯◯◯
  • 完全個別指導、成績保証、定期テスト対策
  • 無料体験受付中です!

<メッセージB>

  • 他人と競争するのではなく、自分自身との競争に勝つ。苦しいときに、あと一歩だけ踏み出す、強い気持ちを育てたい。
  • 完全個別指導、成績保証、定期テスト対策
  • 学習塾 ◯◯◯
  • 無料体験受付中です!

2つのメッセージを比較すると、信念を伝えているメッセージBの方が心に響くのではないでしょうか。自分がなぜ講師を始めたのか、その信念を伝えるからこそ心に響くのです。販促ツールを制作する際には、あなたの信念も記載してみてはいかがでしょうか。必ず良い成果が生まれると思います。



4. まとめ


女子高生と勉強道具のシルエット図

4.1 講師の熱量を発信し続ける


インターネットやAIなどにより、学習塾は転換期を迎えています。従来のような集団授業型であれば、日本国内で最も話が上手い講師が、たった一人だけいれば事足りる訳です。

 

ただ、授業を聞いただけでは身につかないので、生徒を励まして背中を押し続けるようなビジネスが、今後、市場を拡大していくことは間違いありません。

 

そのような中では、学習塾の指導要綱よりも、講師のキャラクターが重要視されるようになります。いかに講師の熱量を伝えていくのかを考えたときに、信念を伝えることはとても大切です。学習塾の生き残り戦略を考えるときに、メッセージングこそが生徒を集めるキーワードなのです。 

  

(今回触れませんでしたが、新規で生徒を獲得できるタイミングは、1年に1回だけと思った方がいいので、事前にシッカリとスケジューリングしておきましょう。)