営業部長必見!大型契約を受注するためのアカウントプラン作成法

営業部長必見:大型契約を受注するためのアカウントプラン作成法

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。

宮崎祥一のプロフィール写真


今日の論点


そのアカウントプラン、本当に役に立っていますか?

営業部門において大型契約を受注することは、一般的な契約を取るよりも大きな挑戦となります。大型契約は、その規模のために見込み顧客の数が限られているだけでなく、受注を決断させるまでのプロセスが複雑で長期化することが多いのです。

 

本ブログでは、営業部長や営業担当者の方々が大型契約の受注に成功するための具体的な戦略と手法をご紹介します。特に、アカウントプランの作成と実行に焦点を当て、顧客との信頼関係を築き、契約締結の意欲を高めるための実践的なアドバイスを提供します。

 

大型契約の受注は、単なるセールストークや値引き戦略では実現しません。綿密な計画と顧客理解、そして価値提供のアプローチが不可欠です。このブログを通じて、より効果的な営業戦略を構築し、チーム全体の成果を最大化するためのヒントを掴んでいただければ幸いです。

 

 

 あっ、そうそう、そもそもレビュアーの営業部長ご本人が、アカウントプランの書き方を知らないということが少なくありません。部下から質問を受ける前に、基本をマスターしておきましょう。



目次


1. 課題と背景


テキスト:Issue、背景画像:頭を抱えるスーツを着た男性

1.1 大型契約が受注できないワケ


近年、大型契約を受注しにくくなっている状況が多くの企業で見受けられます。その理由として、以下の3つの要因が挙げられます。これらの要因を理解することで、現状の課題を明確にし、適切な対策を講じるための基盤を築いていきましょう。

 

1. 市場の競争激化: 大型契約の市場はますます競争が激しくなってきています。新しい競合企業や製品が次々に登場し、差別化が難しくなっています。

 

2. 購買プロセスの複雑化: 大型契約の獲得には多くのステークホルダーが関与するため、意思決定プロセスが複雑化しています。複数の部署や経営層の承認が必要となり、契約締結が遅れることがあります。

 

3. 顧客の期待値の上昇: 技術の進化や情報の容易な入手により、顧客の期待値が上昇しています。顧客はより高い品質、優れたサポート、具体的なROI(投資対効果)を求めるようになっています。

 

このような背景の中で、業績を伸ばしていくためには、効果的なアカウントプランを作成することが重要です。あなたの会社では以前のフォーマットをそのまま流用して、穴埋めをしているだけではありませんか?

 

今回はアカウントプラン作成に必要な調査ポイントを明らかにし、成功に導くための具体的な方法をご紹介します。



2.  課題の構造


テキスト:Insight、背景画像:驚く若い女性

2.1 一般的なアカウントプランの構成


まず初めに、一般的なアカウントプランの項目とその内容を確認していきましょう。

 

1. ターゲット顧客の深い理解

  • 顧客のニーズと課題: 顧客が直面している具体的な課題やニーズを深掘りします。これには、顧客の業界特有の問題や市場の変動に対する懸念が含まれます。例えば、技術革新による業務プロセスの改善要求やコスト削減のプレッシャーなどです。
  • 業界動向の把握: 顧客の属する業界のトレンドや競争状況を把握します。これにより、顧客がどのような外部環境に影響を受けているのかを理解できます。

 

2. 戦略的アプローチ

  • 購買プロセスの理解: 顧客の購買プロセスを詳細に理解します。これは、意思決定者や影響力のあるステークホルダーを特定し、彼らがどのようにして最終決定を下すかを把握することを含みます。具体的には、どの部署が初期調査を行い、どの段階で経営層が関与するのかを明確にします。
  • 予算サイクルの確認: 顧客企業の予算策定時期やサイクルを確認し、最適な提案タイミングを見計らいます。例えば、年度末に向けた予算編成時期を狙うことで、提案が効果的に響く可能性が高まります。

 

3. リソースの最適配分

  • 重点顧客の選定: 企業にとって重要な顧客を特定し、リソースを集中させます。これは、売上への貢献度や将来的な成長ポテンシャルを考慮した上で決定します。
  • 効率的なリソース配分: 営業チームや技術サポートチームのリソースをどのように配分するかを計画します。重要な顧客には専任の担当者を配置するなどの対策が考えられます。

 

4. 長期的な関係構築

  • 継続的なコミュニケーション: 顧客との定期的なコミュニケーションを計画し、信頼関係を築きます。これは、定期ミーティングやレビューセッションを含みます。
  • フォローアップの計画: 顧客が購入後にどのようにサポートされるかを明確にし、フォローアップの計画を立てます。これにより、顧客満足度を高め、長期的なリピートビジネスを促進します。

 

5. 予測と目標設定

  • 売上目標の設定: 各アカウントごとに具体的な売上目標を設定し、それに向けたアクションプランを策定します。
  • 進捗管理と調整: 定期的に進捗をモニタリングし、必要に応じて戦略を調整します。これには、定量的な指標を用いたパフォーマンス評価が含まれます。

 

6. 競争優位の確保

  • 競合分析: 競合他社の製品やサービスと自社の提案を比較し、顧客にとっての優位性を明確にします。競合分析を通じて、自社の強みと弱みを理解し、それを活かした戦略を立てます。
  • 差別化ポイントの強調: 顧客に対して、自社製品やサービスの独自性を強調し、競争優位性を明確にします。これには、特許技術や優れたアフターサポートなどが含まれます。

 

必要な要素は網羅されていますが、項目をただ埋めていくだけでは不十分です。それぞれの項目がなぜ必要なのか、何を調べるべきなのかが明確でないと、効果的なアカウントプランは作成できません。次のセクションでは、「何を調べるのか」と「何を書くのか」に分けて詳しく説明します。



3. 解決策


テキスト:Solution、背景画像:木で作られた小さな階段と上昇を表す矢印

3.1 顧客の何を調べるのか


効果的なアカウントプランを作成するためには、事前に詳細な情報を収集し、顧客の状況や市場環境を正確に把握することが重要です。以下では、特に注目すべき調査ポイントを挙げています。

 

1. 購入することができるのか?:いかに商品や提案が優れていても、対象企業の業績が悪く、予算を確保できない場合があります。まずは、対象企業の最新の財務報告書や経営計画を確認し、収益性やコスト構造、資本の状況を把握することが重要です。これにより、予算化が可能かどうかを判断できます。また、業績が悪化しているのであれば、重点アカウントから外すべきです。リソースを効果的に配分するためにも、対象企業の経営状況を慎重に見極めることが必要です。

 

2. 経営戦略にマッチしているか?:提案する商品が対象企業の経営戦略に合致しているかどうかを確認する必要があります。対象企業の中期経営計画やIR資料を確認し、企業のビジョンやミッション、戦略的目標に対してどのように貢献するかを理解します。これにより、提案内容が企業の戦略と整合性が取れているかどうかを判断できます。経営戦略にマッチしていれば、それを拒絶する理由がなくなります。そのため、提案が企業の戦略にしっかりと寄り添っていることを示すことが重要です。

 

3. どの組織が購入するのか?:品質管理システムを販売する場合を例にとると、品質管理部門や情報システム部門が主要な接点となりますが、実際に予算をつけるのは各工場の予算担当部門である場合が多いです。したがって、最終的な予算を持つ部門を明確に把握し、その部門に適切なアプローチを行う必要があります。案件が進捗しない場合、交渉相手を間違えている可能性が高いです。そのため、どの部門が最終的な決定権を持つのかを慎重に見極めることが重要です。

 

4. 責任者は誰なのか?:大型契約を受注する際には、役員が最終的な決裁者となることが多いです。役員の人物像を知るために、過去の経歴やメディアのインタビュー記事などの情報を収集し、彼らの価値観や優先事項を理解することが重要です。これにより、提案がどのように響くかを予測し、より効果的なコミュニケーション戦略を立てることができます。また、決裁者だけでなく、ライバル関係となる役員についても調べることが大切です。障害になる横やりを事前に防ぐためにも、彼らの立場や意見を把握しておくことが必要です。

 

5. 予算化のプロセスは?:新しい予算をつけてもらうためには、対象企業の予算化プロセスを理解しておく必要があります。例えば、3月末が決算の企業の場合、8月頃から情報収集を始め、11月に企画書を立案、翌年1月に役員会の承認を得て、2月に契約を締結するというスケジュールが一般的です。特に、役員会の日程を調べることが重要です。役員会は頻繁に開かれるものではないため、役員会で再検討になった場合、受注の日程が大きくずれ込む可能性があります。これらのスケジュールに合わせて提案を進めることで、効果的なタイミングでアプローチできます。

 

6. 拡張できる余地は?:対象企業の満足度を高めるためには、毎年拡張プランを提示することが重要です。例えば、対象商品の上位グレードを提案したり、他部門でも使用できるような拡張案を継続して提案するなど、事前にプランを立てておくことが求められます。新たな大型契約を探すよりも、既に受注した契約を拡大する方が手間がかかりません。なぜなら、既に会社の意思決定プロセスや決裁者を把握しているため、よりスムーズに進めることができるからです。これにより、長期的な関係を築き、追加のビジネスチャンスを創出することが可能になります。

 

7. 競合は誰なのか?:競合他社の製品やサービスと自社の提案を比較し、顧客に対する優位性を明確にします。競合分析を通じて、自社の強みと弱みを理解し、それを活かした戦略を立てることが重要です。競合他社の市場シェア、価格設定、提供する付加価値などの情報を収集し、それに基づいて差別化ポイントを強調します。顧客に対して十分に浸透できれば、顧客から競合の情報を得ることができるだけでなく、自分たちが有利になるようなRFP(Request for Proposal/提案依頼書)を顧客に出させることも可能になります。


3.2 具体的に何を書くのか


収集した情報をもとに、アカウントプランにどのような具体的な内容を記載するかを示します。これにより、計画が実践的で効果的なものとなります。

 

1. 経営状況

  • 企業名と概要:対象企業の基本情報、設立年、従業員数、主要製品やサービスの概要、業界内でのポジションを詳しく記述します。企業がどのような顧客層をターゲットにしているか、またどのような市場で競争しているかも含めます。
  • 財務状況:最新の財務報告書から収益性、営業利益率、コスト構造、キャッシュフローの状況をまとめます。また、過去数年間の業績推移を簡潔に分析し、企業の財務的健全性やリスク要因を示します。

 

2. 経営戦略との整合性

  • ビジョンとミッション:対象企業が掲げるビジョンやミッションステートメントを具体的に記述し、自社の提案がどのようにそのビジョンやミッションに寄与するか、どのように企業の価値創造に貢献するかを示します。
  • 中期経営計画:企業が掲げる中期経営計画の内容を詳細に記述し、その中で特に重要視されている戦略的目標や課題に対して、自社の提案がどのように解決策を提供するかを具体的に示します。また、その実現可能性を高めるための提案内容やサポート体制についても触れます。

 

3. 購入部門の特定

  • 主要部門とその役割:提案する商品に関与する主要部門を特定し、それぞれの部門がどのような役割を果たすのか、各部門が持つ権限や影響力についても詳しく記述します。可能であれば、組織図を取得し、各部門の位置付けを明確に示します。
  • 最終決済部門:最終的に予算を持ち、契約を締結する部門を特定し、その部門がどのような承認プロセスを経るか、またそのプロセスにどのように影響を与えることができるかを詳細に記述します。

 

4. 意思決定者の把握

  • 主要な意思決定者:大型契約の締結に関与する主要な意思決定者の名前、役職、過去の経歴や実績を詳しく記載します。また、彼らが過去にどのような判断を下してきたか、その判断基準や優先事項を分析し、提案がどのように響くかを予測します。
  • 人物像と関係構築戦略:各意思決定者の価値観や優先事項、パーソナリティに基づいて、どのような関係構築が最も効果的かを戦略的に計画します。例えば、彼らが重視する信頼や透明性、迅速な対応などに焦点を当てたアプローチを提案します。

 

5. 予算化プロセスの理解

  • 予算サイクルと承認プロセス:企業の予算サイクルを詳しく理解し、各段階でどのような承認プロセスが必要かを記述します。例えば、年度初めに予算が決定される場合、その前の準備段階でどのように関与できるかを考慮し、提案のタイミングを計画します。
  • 提案のスケジュール:提案を進めるための具体的なスケジュールを詳細に記載し、各ステップでのアクションを明確にします。例えば、プレゼンテーションのタイミングや資料提出の締め切りなどを含め、スケジュール全体を一貫して管理します。
  • 予算確認:対象企業が新規投資に割り当てることができる予算の可用性を確認し、その範囲内でどのような提案が現実的かを評価します。さらに、予算超過の場合の代替案や調整方法についても考慮します。

 

6. 拡張提案の計画

  • 追加提案内容:対象アカウントの満足度を向上させるため、どのような追加提案が効果的かを検討し、それをどのタイミングで提示するかを計画します。例えば、既存の製品のアップグレードや、新たなサービスの導入提案などを具体的に記述します。
  • クロスセリングの機会:他部門での利用可能性や、関連する製品・サービスの提案機会を探り、クロスセリングの可能性を最大限に活用する計画を立てます。これにより、契約の価値を拡大し、長期的な関係をさらに強化します。

 

7. 競合分析

  • 競合他社の情報:競合他社の基本情報や市場シェア、提供する製品やサービスの特徴を詳しく記述します。また、競合他社が直面している課題や市場でのポジション変化についても言及し、競争環境を包括的に理解します。
  • 自社製品との比較:競合他社の製品やサービスと自社の提案を比較し、自社の強みや差別化ポイントを具体的に示します。これにより、顧客が自社製品を選ぶべき理由を明確に伝え、購買意欲を高めます。
  • 差別化ポイントの強調:顧客に対して、自社製品やサービスの独自性や競争優位性を強調する戦略を立てます。例えば、独自の技術や優れたサポート体制、顧客ニーズに特化したソリューションなどを具体的にアピールします。

 

8. 今後のアクションプラン

  • アクションプランの設定:提案を実現するための具体的なアクションプランを詳細に設定します。各ステップでどのようなアクションが必要か、またそれぞれのタイミングを明確にし、スムーズな実行を目指します。
  • 役割分担:チーム内で各メンバーが担当する役割を明確にし、それぞれの強みを活かした役割分担を行います。また、進捗状況をモニタリングし、必要に応じて調整を行う体制を構築します。

 

この章では、効果的なアカウントプランを作成するために必要な情報収集のポイントと、それをどのようにアカウントプランに反映させるかについて詳しく説明しました。適当に穴埋めをするのではなく、アカウントの状況を十分に理解した上で、納得感のあるアカウントプランを作成できるようになったのではないでしょうか。



4. まとめ


テキスト:Conclusion、背景画像:ショートカットで丸いイヤリングをつけた笑顔の女性

4.1 アカウントプランはアップデートすることが大切


アカウントプランは一度作成したら終わりというものではありません。アカウントの状況は常に変化しますので、四半期ごとのアップデートが必要です。また、その際には当初予定していたプランとどの程度の乖離があるのかを把握しておく必要があります。

 

四半期ごとに見直していれば、仮に進捗が遅れていたとしても、リカバリープランを検討し対策を実施することが可能なため、悲観する必要はありません。重要なのは、誰が何をいつまでに終わらせるのか、その行動を裏付ける情報は何なのかを明確にし、これらをチームで共有することです。

 

定期的な見直しと情報共有を行うことで、アカウントプランはより現実的で効果的なものとなり、最終的に大型契約の受注につながります。アカウントプランの継続的な改善と適応を心掛け、常に最適な戦略を維持することが重要です。

 

 

---

おっと、忘れるところでした。アカウントプランに限らず提案書関連のパワーポイントついては、事前に規約を作っておきましょう。

  • なぜこんなフォントを使ったの?
  • このデザインって昭和っぽくない?
  • 色が濃過ぎてプリントしたら真っ黒
  • 左右のバランスおかしくない?
  • この画像の著作権って大丈夫?
  • 文字が多すぎるよね。

などと思わせる人が必ず出てきますから・・・。