宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー
SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。
今日の論点
役員のアポイントは意外と簡単に取れる
高額商品を売るには、企業のトップ層であるCXO(CEO、CFO、COOなど)との関係を築き、信頼を得ることは非常に重要です。これらのリーダーたちは、企業全体の戦略や大規模な予算決定に関与しているため、彼らの支持を得ることが契約の成否を左右することが多いです。
ただ役員との面談を設定することは容易ではありません。担当者とのアポイントを取って提案を行った後も、課長、部長、そして役員と順に話を進めていかなければなりません。役員にたどり着くまでに、2〜3年を要することも少なくありません。
本ブログでは、営業部長や営業担当者が高額商品を効果的に販売するためのアプローチについて詳しく解説します。具体的には、CXOとのミーティングを成功させるための戦略、信頼関係の構築方法、そしてデータに基づいた営業技術について探ります。
なお、この方法は「私どもの社長が役員の◯◯様にご挨拶を差し上げたいと申しておりまして…」といったような、しょぼいオチではありません。
目次
1.1 営業はプロセスが大切!?
2. 決済者に会わなければ契約は取れない
2.1 決済者に直接会えば話が早い
3. 途中のプロセスを飛ばして役員に会う方法
3.1 ターゲット企業を決める
3.2 必ず役員に会える場所に行く
3.3 役員が関心を示すミーティングを打診する
3.4 個別ディスカッションを定例会にする
4. まとめ
4.1 役員に直接会う方法は必ずある
1. 一般的な法人営業のプロセス
1.1 営業はプロセスが大切!?
まず始めに、営業のプロセスを確認しておきましょう。ここでは法人に対して、3,000万円の商品を販売すると仮定します。
3,000万円という金額を考えると、役員の決済が必要になりそうです。まずは担当者にアポイントを取り、そのあと、訪問、提案、質疑応答、社内承認、これらのプロセスを経たあと、晴れて契約となります。
当然、途中には担当者、課長、部長、役員と、いくつものハードルがあります。これが役員に会うまでに時間がかる原因なのです。
できれば途中のハードルを一切合切飛び越えて、いきなり役員に会いたいところです。しかし代表番号に電話をかけても、役員につないでもらえませんし、受付に直接出向いても、外出中だと言われて追い返されてしまいます。いきなり役員に会うことが出来ないからこそ、営業はプロセスが大切であると言われているのです。
しかし、本当に会えないものなのでしょうか・・・。
2. 決済者に会わなければ契約は取れない
2.1 決済者に直接会えば話が早い
当たり前ですが、決済者の承認がなければ、契約を獲得することは出来ません。今回のケースで言うと決済者は役員なので、出来る限り早く、この役員と会わなければなりません。
役員に会えば話が早いことは解っているにも関わらず、その方法が見つからない。もっと正確に言うと、いきなり役員のアポイントなどは取れないと、最初から諦めているのだと思います。
シンプルに考えれば、役員が必ず出向く所に足を運び、どうしても面談したくなるような話を持ちかける。これでアポイントを取ることができるはずです。
それでは、具体的なプロセスを解説していきます。
3. 途中のプロセスを飛ばして役員に会う方法
3.1 ターゲット企業を決める
まず始めに、既存顧客のリストを作ってください。次に既存顧客のライバル企業のリストを作ってください。このライバル企業リストがあなたのターゲットリストとなります。
もちろんライバル企業に対して、既存顧客の情報を売る・・・とか言うわけではありませんので、心配ご無用です。
3.2 必ず役員に会える場所に行く
さてターゲット企業が決まれば、その会社の役員に会いに行かなければなりません。しかし、電話をかけてもつないでもらえませんし、受付に行っても追い返されるだけです。
それではどうすれば良いのかと言うと、役員が必ず行かざるを得ない場所にあなたも行く・・・それだけです。
役員が必ず行かざるを得ない場所というのは、いくつかあります。一番最初に思いつくのが賀詞交歓会ではないでしょうか。賀詞交歓会では、確かに大企業の役員と名刺交換をすることはできますが、来場者が多すぎて、挨拶をして終わるだけです。自社の商品を説明できるような時間は、全くありません。
そこでお勧めしたいのが表彰式です。世の中には◯◯協会というような団体が、多数存在しています。大企業であれば、100ぐらいの団体に所属しているのではないでしょうか。これらの団体では、年に1〜2回程度、顕著な実績を残した企業を表彰しています。大企業であれば、どこかの団体から必ず表彰を受けています。この表彰式には、必ず役員が出席しますので、そこに出向いていけば、役員に会うことが出来ます。
ちなみに、あなたの会社がその団体に所属していなくとも、大抵の場合、1万円ぐらいの参加費を支払えば、その表彰式に出席することが出来ます。表彰式の後には懇親会がありますので、そこで役員と名刺交換をすれば、3分間ぐらいは話すことが可能です。ただ、役員は最初の30分程度で帰ってしまいますので、出遅れないように注意しましょう。
3.3 役員が関心を示すミーティングを打診する
さて、晴れて役員と名刺交換ができました。しかしそこで商品やサービスのなどの話をしてはいけません。役員はあなたの提案する商品やサービスに、全く関心を持っていないからです。だからあなたは、役員が絶対に関心を持つような話題・・・これを見つける必要があるのです。
答えは簡単です。役員が絶対に関心を持つ話題・・・それは競合他社の話題です。最初にこの企業をターゲットとして選んだ理由を思い出してください。あなたの会社は、既にこの会社の競合他社と取引があるのです。
さぁ、役員に対してこう切り出してください。
「◯◯社(競合他社)と個別のディスカッションをしてみませんか?」
あなたの提案する商品やサービスには、全く興味はないのですが、競合他社については、強い関心を持っているのです。
ディスカッションの内容は、あなたの商品やサービスのカテゴリーに属する議題であればOKです。これで役員は必ず興味を示します。あとは「詳細は秘書の方に連絡します。」と伝えておけば、これでアポイントを取ることが出来ます。
この役員が個別のディスカッションをOKしても、既存顧客がOKするかどうかわからない・・・いえ大丈夫です。既存顧客も同じように競合他社の情報に飢えていますので、こちらも必ずこの話に乗ってきます。
3.4 個別ディスカッションを定例会にする
さて、初回のディスカッションを漫然と迎えてはいけません。次の目標は、この個別ディスカッションを、定期的に開催できるようにすることです。それには、ディスカッションを行うための議題を洗い出して、一覧表を作りましょう。コレを片手に初回のディスカッションを迎えれば、定期的に開催できること間違いなしです。
ただ注意していただきたいのは、今後のディスカッションにおいて、あなたの商品やサービスを説明するセッションを、勝手に設けてはいけません。この定例会は、あくまでお互いが抱えている問題点を確認し、その解決に向けたアプローチなどを話し合う場です。余計な売り込みは止めておきましょう。しばらくすると必ずどちらかの会社が、商品やサービスを説明して欲しいと言い出しますので、それまで待ってください。
定例的に開催ができるようになったら、契約は目の前です。競合他社が入り込む余地は一切ありません。もちろん、価格競争の心配もありません。
4. まとめ
4.1 役員に直接会う方法は必ずある
決済者に直接会って交渉することが、契約の近道であることは、誰もが解っています。しかし、その手段がなかなか見つからなかったのではないでしょうか。
今回ご紹介した方法は、私が偶然発見したものです。以前、参加したセミナーの懇親会で、某大手飲料メーカーのCMOと名刺交換をする機会がありました。その際にたまたま競合他社の話が出たので、私が個別ミーティングを設定し、橋渡しをすることになりました。
思いのほか簡単にCMOのアポイントが取れたので、他のセミナーでも同じことを試してみたところ、簡単にアポイントを取ることが出来ました。それからは、この方法を使って、セールスサイクルの短縮を図っています。
今回ご紹介した方法以外にも、やり方はたくさんあると思いますので、みなさんも諦めずに探してみてください・・・もし見つけたら、コッソリ教えてください。